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日外会誌. 89(11): 1810-1821, 1988
原著
肝癌に対する超音波映像下YAGレーザー球状凝固療法の肝深部温度計測による基礎的検討
I.内容要旨本邦の原発性肝癌の多くは,肝硬変症を合併し,多発化する傾向があるので,その治療法は困難なことが少なくない.特に,肝切除術と肝動脈塞栓術の適応とならない症例に対しては,理想的な治療法は,いまだ開発されていない.そこで, YAGレーザーの熱作用を用いて,超音波映像下に肝深部の癌を熱変性させる方法(超音波映像下YAGレーザー球状凝固療法)を開発した.今回,本法の安全性及び妥当性を検討する目的で,摘出牛肝と雑種成犬肝を用いて肝深部温多点計測を行ない,超音波像及び組織変化と比較検討した.
① レーザーファイバーの先端周囲には,組織蒸散に伴う空洞が形成され,空洞の周囲には黒色炭化層が,その外側には凝固層が形成された.黒色炭化層では,核は濃縮・消失し,細胞質はエオジンに濃染していた.凝固層では肝細胞は変性・萎縮していた.
②レーザーファイバーを含む平面上の局所温度は, レーザーファイバーの先端付近を中心とする,ほぼ同心円状の等温線分布で表示された.最高温点は,常にレーザーファイバーの先端付近に存在し,先端から離れるほど温度は低下していた.黒色炭化層の温度は約200℃,凝固層外縁の温度は約60℃であった.
③蒸散凝固層は,超音波像上,高エコー域として認められ,蒸散凝固層の最大径は高エコー域の横径よりも2~3mm大きかった.
以上より,正常肝を用いた実験ではあるが,肝細胞を熱変性させるために必要な温度は, 60℃以上であり,超音波モニターを用いながらレーザー照射すれば,腫瘍辺縁の癌細胞まで完全に熱変性させ得ると考えられた.
キーワード
超音波映像下YAGレーザー球状凝固療法, 肝深部温度計測, 肝癌, ガス吸引装置, 肝門部血行遮断
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