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日外会誌. 89(8): 1259-1266, 1988


原著

甲状腺分化癌の予後に関する判別分析の信頼性の検討
―シミュレーションを用いて―

1) 東北大学 医学部第2外科
2) 東北大学 病院管理学教室

森 洋子1) , 宮田 幸比古1) , 高屋 潔1) , 佐々木 崇1) , 田口 喜雄1) , 森 昌造1) , 関田 康慶2)

(昭和62年7月25日受付)

I.内容要旨
我々は,既に,甲状腺分化癌(乳頭癌,濾胞癌)134名を対象として,予後に関すると思われる9要因(年齢,性,腫瘤径,腫瘍存在部位,組織型,局所浸潤,リンパ節転移,手術術式,リンパ節郭清)を用いて,判別分析を行ない,術後の再発転移の有無の予測について報告した.134名は,3施設から得られており,3施設合計での分析結果,及び,各施設それぞれでの分析結果を比べると,各施設での分析結果の方が,Sensitivity, Specificityが高値で,False-negative rateは低値をとつた.各施設それぞれでの分析の方が良い結果が得られた原因のひとつとして,目的変数として用いた再発転移の有: 無の比の相異が考えられた.そこで,今回は,目的変数の比に着目して,判別分析の信頼性を検討するためのシミュレーションを行つた.
シミュレーションの方法は,134名から,無作為抽出により症例を選び,新たなる仮想の群を作成し,各群について9要因を用いて判別分析を行う方法を用いた.
シミュレーションの結果は,以下の如くであつた.①再発転移の有無の比が,134名での比に近い2 : 1の場合,症例数が変化しても,Sensitivityは安定していた.Specificityは症例数が少ない方が高値をとり,False-negative rateは,症例数が少ない方が高値をとつた.②再発転移の有無の比が大きいほど,判別の精度は高く,症例数を同一にした場合でも,同様の傾向がみられた.
以上から,134名での判別式のSensitivityは安定したものといえる.また,判別分析に際して,目的変数の比も,判別式の精度に影響を及ぼすといえる.

キーワード
甲状腺分化癌, 多変量解析, 判別分析, シミュレーション, 再発予測

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