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日外会誌. 89(5): 763-770, 1988
原著
指趾末端難治性外傷の治療法に関する臨床研究
I.内容要旨昭和43年より昭和61年の間,末梢血流障害と糖尿病による難治性外傷症例178例を治療した.四肢外傷部が壊死になり,四肢の一部を切断せざるをえなかつたことがあった.乏血肢の原因は動脈硬化であることも多く, これは糖尿病とともに老化現象である.年齢分布が老齢化しているために乏血肢外傷による四肢切断症例が増加した. これに加えるに,病因不明のBuerger病の発症頻度も上昇し,これによっても乏血肢が発病し,四肢切断が増加する一因となっている. この傾向に対処するため,高圧酸素法,交感神経遮断,warfarin療法および糖尿病性壊疸に対する局所insulin浴の各種療法をこころみた. このとき乏血肢における難治外傷の治癒をはかるためには,中枢側の動脈閉塞解除と末梢血流抵抗減弱を同時にはかる必要がある.動脈閉塞解除のためには血行再建手術が必要であり,末梢血流の確保には高圧酸素法,交感神経遮断又はwarfarin療法が有効である.容積脈波分析により乏血肢指趾の末梢血流と中枢動脈血流を推測し,経時的に検討した.指趾端容積脈波は3因子に分解され解析された.丘型波,棘状波とノッチの変化から指趾容積脈波の変化を知り,次のことを推測した.組織血流を丘型波により表現し,棘状波は中枢側動脈流量を示している.末梢組織血流を交感神経遮断等により回復すれば, 6カ月後の追跡調査において外傷が治癒していることを認めた.糖尿病壊疸に対する局所insulin浴によつても,このような短期的効果をみると外傷は治癒していた.しかし治療終了後5年の調査では,患肢切断をうけている症例が多く,とくに動脈硬化性血行障害がほかのBuerger病や糖尿病壊疸に比較して, この傾向が顕著であった.
キーワード
乏血肢, 糖尿病性難治潰瘍, 動脈硬化症性動脈閉塞, 交感神経遮断, Buerger病
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