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日外会誌. 89(4): 560-567, 1988


原著

臓器血行動態に関する研究
―術中肝血流測定の意義―

京都大学 医学部第1外科

土井 隆一郎 , 井上 一知 , 小切 匡史 , 角 昭一郎 , 高折 恭一 , 鈴木 敞 , 戸部 隆吉

(昭和62年5月14日受付)

I.内容要旨
超音波トランジットタイム血流計を臨床的に術中肝血流量測定に初めて使用しその有用性について検討した. 
術中患者13症例の肝動脈血流量および門脈血流量は,それぞれ260.0±23.8ml/min,730.8±41.3ml/minであつた.また総肝血流量は994.6±52.4ml/minであつた.肝動脈血流量および門脈血流量の総肝血流量に対する割合はそれぞれ0.26±0.02,0.73±0.02であつた.また肝動脈と門脈の血流量比は0.37±0.04であつた. 
門脈を一時的に閉塞すると,肝動脈血流量は有意に増加した(23.7±4.3%,p<0.01).一方肝動脈を一時的に閉塞しても門脈血流量は有意の変化を示さなかつた. 
総肝動脈を一時的に閉塞すると,肝動脈血流量は有意に減少した(基礎値の77.6±3.9%,p<0.05)が門脈血流量は有意の変化を示さなかつた.上記の結果がAppleby手術を施行するうえに必要な肝血行動態を把握するために極めて有効であつた症例を経験した. 
超音波トランジットタイム血流計は術中臓器血流測定において,容易かつ迅速に操作可能で,極めて安定した再現性の良い測定結果を示した.本測定法は今後肝切除術あるいは門脈圧亢進症等,肝血行動態が問題となるような手術において,有力な情報を提供すると考えられた.

キーワード
肝循環, 門脈血流量, 肝動脈血流量, 術中血流測定, 超音波トランジットタイム血流計

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