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日外会誌. 89(4): 482-493, 1988
原著
高齢者の開腹手術後における防御・修復能の変動と栄養管理の効果に関する臨床及び実験的研究
I.内容要旨高齢者の術後には若齢者に比べ,生体の防御・修復能が低下した状態にあることが示唆されている.
そこで高齢者(70歳以上)および若齢者(60歳未満)の術前,術後において,感染防御能の変化を血漿のオプソニン活性を指標として,また生体の防御修復に関連をもつと考えられる諸血漿蛋白の変動を測定し,高齢者の術後の特徴を明らかにするとともに,さらにその観点から動物実験において術後の栄養管理の効果を検討した.その結果.
1) 術前,術後のオプソニン活性の変動を,Hirsch-Strauss法変法によるOpsonicIndex (OI)でみると,術前より高齢者では0.87±0.14と若齢者の0.95±0.12に比較し低値の傾向を認めた.OIの術後の低下は若齢者に比べ著しく(高: 0.67±0.21, 若: 0.77±0.17),また術後7日目までは有意に低値であった.
2) Albumin, rapid turnover protein は,高齢者において常に低値の傾向を示した.OI とalbuminの間には正の相関関係(r=0.63)が認められ,またprealbuminが術後低値のままであった症例の術後7日目のOIは0.74±0.12と低値であった.
3) C3およびFibronectinは,高齢者,若齢者ともに術後一過性の低下の後上昇した.術後5~7日目には,若齢者では術前値に対し有意に上昇したが,高齢者ではこのようなovershoot現象は示さなかった.
4) ラットを用いた実験から,老齢動物でも術後早期からの高カロリー投与により術後7日目には栄養学的指標,OI,血漿蛋白は回復し,その有用性が確かめられた.しかし術後3日目のOIは,若齢ラット0.93±0.09に対し老齢ラット0.76±0.09と低値であり,また血漿蛋白も老齢ラットにおいてより低下し,術後早期の段階では,高カロリー投与のみでは必ずしも十分な効果を示さなかった.
キーワード
高齢者手術, オプソニン活性, 栄養管理
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