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日外会誌. 89(1): 6-20, 1988
原著
トロンボキサン B2と6-keto-PGF1α の変動からみたエンドトキシンショックの病態に関する実験的研究
I.内容要旨トロンボキサンA
2(TXA
2),ならびにプロスタサイクリン(PGI
2)の安定代謝物であるトロンボキサンB
2(TXB
2),6-keto-PGF
1αの測定方法は煩雑であり確立されていない.著者は血漿中TXB
2,6-keto-PGF
1αをODSシリカカラムーシリカカラムにより抽出分離し,
125I-RIAキットによる測定を試みた.次いでエンドトキシンショックの病態におけるTXA
2の関与を明らかにするため,ラットならびにイヌのエンドトキシンショックモデル,さらにTXA
2合成酵素阻害薬の前処置によりTXA
2産生を抑制したエンドトキシンショックモデルにおいて,上記方法により血漿中のTXB
2,6-keto-PGF
1αの経時的変動を測定した.この成績を動物の生存率,循環動態および主要臓器標本の光顕組織像と対比することによりエンドトキシンショックの病態におけるTXA
2の果たす役割について検討した所,以下の結論を得た.1)ラットのショックモデルにおいて,TXA
2合成酵素阻害薬の前処置により生存率は有意に改善された(p<0.01).2)ラットおよびイヌのショックモデルにおいて,初期にTXB
2が急増してTXB
2/6-keto-PGF
1α比が上昇,その後6-keto-PGF
1αが時間の経過とともに漸増してTXB
2/6-keto-PGF
1α比は前値より低下した.3)TXA
2合成酵素阻害薬の前処置により,初期のTXB
2の増加は抑制され,TXB
2/6-keto-PGF
1α比は初期より低値を示した.4)イヌのショックモデルにおいて初期のTXB
2/6-keto-PGF
1α比の上昇にほぼ一致して肺動脈圧および気道内圧の上昇を認めた.5)TXA
2合成酵素阻害薬の前処置により,初期の肺動脈圧および気道内圧の上昇はおさえられた.以上からエンドトキシンショックにみられる肺動脈圧の上昇と肺コンプライアンスの低下がTXA
2の増加に関係あることが明らかにされた.またTXA
2合成酵素阻害薬の投与により動物の生存率が改善されたことから,ショックの重篤化因子としてTXA
2が関与していることが示唆された.
キーワード
エンドトキシンショック, トロンボキサン A2, プロスタサイクリン, TXA2合成酵素阻害薬
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