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日外会誌. 88(7): 852-863, 1987


原著

Hybrid型人工膵に関する実験的研究
―ハムスター膵ラ氏島を封入したhybrid型人工膵の膵全摘犬への装着について―

奈良県立医科大学 第1外科学教室 (指導:白鳥常男教授)

瀬川 雅数

(昭和61年9月16日受付)

I.内容要旨
膵全摘術後患者や重症糖尿病患者の生理的な糖代謝を目的として, 失われた膵内分泌機能を異種膵ラ氏島で代用し, 異種組織に対する免疫反応を人工膜により防御しようとするhybrid型人工膵 (以下, 半人工膵) について実験的研究を行い, 以下の結果を得た.
人工膜を管状にしたhollow fiberの外側にハムスター膵ラ氏島を封入して半人工膵を作製し,hollow fiber内を培養液で灌流した.hollow fiberを介して培養液中に分泌されるインスリン量は培養液中のブドウ糖濃度に反応して増加した.
半人工膵を膵全摘犬の大腿動脈・静脈間 (大循環系) に装着した場合は6頭中4頭に, 大腿動脈・門脈間 (門脈系) に装着した場合には5頭中4頭において, 高血糖の改善が得られ, 半人工膵装着中, 少なくとも12時間は, 共に良好な血糖コントロールが認められた.
膵全摘犬の高血糖を改善するのに必要な膵ラ氏島数は, 半人工膵を大循環系に装着した場合, 約10,000個であつたのに対して, 門脈系に装着した場合には約14,000個であつた. しかしながら, 膵ラ氏島10,000個封人半人工膵の大循環系装着群と14,000個封入半人工膵の門脈系装着群における血糖値, および, 血糖を正常化するのに要した時間, さらに, 半人工膵装着中に施行した糖負荷試験の血糖消失率 (K値) には有意差を認めなかつた.
動脈血中インスリン値は半人工膵を大循環系に装着した群が門脈系装着群より高い傾向を示した.
以上の結果より, ハムスター膵ラ氏島を封入した半人工膵は膵全摘犬の血糖を少なくとも12時間は良好にコントロールすること, さらに, 膵全摘犬の高血糖を改善するには, 半人工膵を大循環系に装着する方が, 封入する膵ラ氏島数の面からみて, 門脈系に装着するより効果的であることが示唆された.

キーワード
Hybrid型人工膵, 膵全摘犬, 膵ラ氏島, 大循環, 門脈循環

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