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日外会誌. 88(4): 432-439, 1987


原著

胃全摘術後患者の Quality of Life 評価におけるエネルギー消費量測定の意義

群馬大学 医学部第1外科学教室
*) 国立栄養研究所 運動生理研究室

坂本 孝作 , 中野 眼一 , 加藤 良二 , 鈴木 丹次 , 長町 幸雄 , 中村 卓次 , 橋本 勲*)

(昭和61年5月30日受付)

I.内容要旨
一日のエネルギー消費量を測定することにより生活活動指数を算定し,これに基いて導かれる生活活動の程度(生活活動強度)を判定することにより,胃全摘術後患者のQuality of life(QL)の程度分類の判定に客観的根拠を与え得るかどうかを検討することを目的とした.研究対象及び方法:教室で手術を受け外来にて経過観察中の,治癒切除術後6ヵ月以上の胃癌患者60名(胃全摘long loop Roux-Y法再建群(LLRY)38名,胃亜全摘Billroth I法(B-I)群13名,同Billroth II法(B-II)群9名)および膵頭十二指腸切除術後の患者(PD群)3名,食道全摘再建術後の患者(食道群)5名を対象に選んだ.エネルギー消費量の測定は橋本の方法によつた.即ち,携帯型心拍記録装置を用いて24時間の心拍数を1分毎に連続記録し,24 hours-Heart Rate Ratio(24h-HRR)法により1日のエネルギー消費量予測値を求めた.この予測値に基いて,対象患者の生活活動指数を導いた.公衆衛生審議会の答申内容に従い,生活活動指数を4段階に階層化し,QLの程度との関係を検討した.結果及び結論:①24h-HRR法による1日のエネルギー消費量予測値とVO2/HR法により実測推定した1日のエネルギー消費量とは,LLRY群からの抽出標本20名において,強い正の相関を示した.②24h-HRR法で測定した1日のエネルギー消費量予測値は,B-I群,B-II群,LLRY群,食道群間で著しい差はない.③LLRY群38名中,Excellent QLとGood QLの患者合わせて33名のうち27名(82%)は生活活動強度が「中等度」以上であつた.④食道群5例のうち1例はQL poorで,著しく低い生活活動指数を示した.以上の結果から,QLの程度と生活活動強度はパラレルであり,QLの判定規準にエネルギー消費量の測定結果に基く生活活動強度の項目を設けることにより,一層客観性の高いQLの程度判定をすることができる.

キーワード
胃癌, 胃全摘術, Quality of life, カロリメトリー, 生活活動強度

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