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日外会誌. 88(3): 318-326, 1981
原著
小児脾摘後感染症に関する実験的検討
I.内容要旨小児における脾摘後感染症に関して,幼若マウスを用いて実験的に検討を加えた.
離乳期にある3週齢マウスを幼若マウスとし,対照には成熟期にある10週齢マウスを使用した.第1に,感染に対する原始反応であるマクロファージの貧食能は,幼若マウスでは脾摘後3日目に術前の3倍と亢進をみた.以後漸減し,3週目には術前の約1/2と最低値を示し,その後貧食能は回復した.10週齢マウスでも同様に,脾摘後3日目では術前の2倍に貧食能は亢進した.しかしその後は貧食能は低下し回復傾向はみられなかつた.第2に,顆粒球系の機能は,幼若マウス,成熟マウスともに脾摘により機能の低下が招来された.これも脾摘後3週目には回復傾向にあり,特に成熟マウスが幼若マウスより回復が早かつた.第3に,細胞性免疫能は,脾摘により幼若マウス,成熟マウスともに低下したが,両者とも経過と共に回復していつた.
特に幼若マウスにおける経時的変化では,脾摘後3日目にマクロファージ機能の著明な亢進を認めたが,脾摘後1週目ではマクロファージ機能は急激に低下し,さらに細胞性免疫能,顆粒球系機能も低かつた.脾摘後3週目では,細胞性免疫能と顆粒球系機能は回復傾向にあるが,マクロファージの貧食能は依然として低かつた.脾摘後5週目には,3つの要素の全てが正常に回復していた.
今回の実験より細胞性免疫能の低下と共に,より原始反応であるマクロファージの貧食能の低下と顆粒球系機能の低下が示唆された.したがつて,小児においては,脾の温存を第一に考えると共に,脾摘が行われた場合には,ワクチンの使用やSplenosisの施行等の免疫補助療法が考慮されるべきと思われた.
キーワード
小児, 脾摘後感染症, 幼若マウス, マクロファージ貧食能
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