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日外会誌. 87(12): 1540-1547, 1986
原著
大腸癌における血中 CEA 上昇関連因子に関する臨床病理学的研究
ー門脈血ならびに末梢血中 CEA 測定結果からの検討ー
I.内容要旨門脈血と末梢1血中CEAを測定した大腸癌66例を対象に,血中CEA上昇関連因子を臨床病理学的に検討すると同時に術中CEAの変化を観察し,血中CEAの上昇機序と門脈血中CEA定量の臨床的意義について検討を加えた.
(1)CEA実測値(mean±SE,ng/ml)と5ng/dl以上の陽性率は末梢血8.1±1.9・33.3%,門脈血26.6±6.4・59.1%であり,後者の実測値と陽性率は前者より有意に高かつた.(2)血中CEAと有意な関連がみられた因子は腫瘍径・壁深達度・リンパ管侵襲・リンパ節転移・Dukesならびにstage分類であつたが,その関連が最も強い因子は静脈侵襲で,門脈血中CEAの実測値と陽性率はv
0 5.0±1.1・26.0%、v
1 6.6±1.1・37.8%,v
2 27.2±8.6・84.6%,v
3 71.4±20.2・100%,sm-pm v 16,7±7.2・62.5%,ss-extra v 60.6±16.2・95.5%であり,静脈侵襲程度ならびに侵襲位置との間に有意な(p<0.005)関連がみられた.(3)v
1~3の門脈血中CEAの実測値と陽性率は開腹時19.4±6.1・40.0%,切除時43.6±11.3・90.2%と手術操作により上昇したが,v
0では開腹時2.5±0.6・17.6%,切除時4.5±1.4・17.6%と変化は認められなかつた.(4)肝転移例のCEA実測値と陽性率は末梢血16.4±5.2・62.5%,門脈血ではそれぞれ77.3±37.8・100%であつた.
以上の結果から,CEAは胸管経路でなく静脈内に浸潤した癌細胞から経門脈性に直接血中に移行していることが強く示唆され,腫瘍径やリンパ節転移などの血中CEA上昇関連因子は静脈侵襲を介して二次的にCEAの血中上昇に関与していると考えられる.また末梢血中CEA陰性の肝転移大腸癌においても原発巣から大量のCEAが門脈血中に流入していた成績ならびに肝転移のhigh risk症例とされているv
2-3とss-extra vで高率に門脈血中CEAが上昇していた成績から,肝転移やそのhigh risk症例を門脈血中CEAの定量によつて予測しうる可能性があるものと考えられる.
キーワード
CEA (carcinoembryonic antigen), 大腸癌, 肝転移, 門脈血, 静脈侵襲
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