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日外会誌. 87(12): 1511-1525, 1986
原著
消化器癌患者における筋力測定の意義
I.内容要旨55歳以上75歳未満の男性の食道癌33例,胃癌34例,胆道癌6例を対象とし低栄養状態が筋力に及ぼす影響を検討した.また,食道癌の一期的切除再建術例の術前筋力と術後肺合併症の関係を検討した.
筋力は著者らの考案による,約1分間に連続10回測定した握力の平均値(GS)と,呼吸筋力として全肺気量位での最大呼気口腔内圧(MEP)と残気量位での最大吸気口腔内圧(MIP)の,それぞれ同性同年代の健常人に対する比である%GS,%MEP,%MIPを用いた.
その結果,①%GSは理想体重比(%IBW),上腕筋囲(%AMC),血清アルブミン(Alb),プレアルブミン(PA),末梢血リンパ球数(TLC),栄養学的手術危険指数(NRI)で低値を示す栄養低下群では低下していた.②%MEPは%IBW,%AMC,上腕三頭筋部皮厚(%TSF),Alb,PA,レチノール結合蛋白,NRI,栄養評価指数(NAI)で低値を示す栄養低下群で,%MIPは%IBW,%AMC,クレアチニン身長係数Alb,PA,NRI,NAIで低値を示す栄養低下群で低下していた.③食道癌術後肺合併症発生例は3例,非発生例は14例であつた.%GS 90%未満群では90%以上群に比較して有意にその発生率が高値であつた.しかし,%IBW,健常時体重比,%AMC,Alb,PAには有意差はなかつた.④%GSは%MEP,%MIPと有意の正の相関を示した.
以上より,%GSは骨格筋肉量,臓器蛋白量をあらわす簡便な栄養指標であり,低栄養による呼吸筋力の低下の判定にも有用であつた.また,%GSにより従来の栄養指標では判定できない機能面からの評価の必要性が示唆された.さらに,食道癌患者では筋力低下が術後肺合併症の一因と考えられ,栄養評価とともに筋力の測定は重要と思われた.
キーワード
栄養評価, 握力, 呼吸筋力, 食道癌, 術後肺合併症
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