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日外会誌. 87(11): 1432-1442, 1986
原著
胆汁中 carcinoembryonic antigen, non-specific cross-reacting antigen, biliary glycoprotein
-その測定と臨床的意義について-
I.内容要旨総胆管結石症17例(対照群),悪性閉塞性黄疸28例,肝内結石症7例の胆汁を採取し,EIA法にて胆汁CEA値を測定した.対照群ではmean±SDは5.0±3.4ng/ml,悪性閉塞性黄疸では20.2±20.4ng/ml,肝内結石症では45.5±16.9ng/mlであつた.悪性閉塞性黄疸例の胆汁CEAは対照群の胆汁CEAより高値を示し,陽性率でみても,血清CEAより胆汁CEAの陽性率が高かつた.また,肝内結石症においては,胆汁CEAは悪性閉塞性黄疸例より高値を示した.しかし,EIA法による測定ではCEAのみでなく,CEA関連抗原をもともに測定する可能性がある.そこでこれらCEA関連抗原を別々に測定するためにCEA,NCA,BGPのそれぞれの抗原を作成し,ELISA法により胆汁CEA,胆汁NCA,胆汁BGPを測定した.
対照群21例の胆汁CEAは0.086±0.026,膵癌15例では0.119±0.024,胆管癌・胆のう癌17例では0.117±0.016であり,悪性疾患で有意(p<0.05)に高値を示した.悪性疾患例の陽性率は,血清より胆汁の方が高く,また,肝転移あるいは肝浸潤のあるものでは胆汁CEAの陽性率はより高くなり,胆汁CEAの測定の方がより有効な検査法といえる.
NCAは対照群で0.086±0.029,膵癌で0.114±0.026,胆管癌・胆のう癌で0.114±0.010であり,BGPは対照群で0.071±0.029,膵癌で0.106±0.021,胆管癌・胆のう癌で0.097±0.019であつた.いずれも悪性疾患において胆汁中に排泄される量が有意(p<0.05)に高値を示したが,良性疾患においても胆汁中に排泄されるNCA,BGPの量はCEAよりやや少ないもののほぼ同等量みとめられた.すなわち,悪性疾患では胆汁中のNCA,BGPはともに増加するが,CEAに比しその程度は低く,また,対照群においても相当量のNCA,BGPが含まれていた.
キーワード
胆汁中 CEA, 胆汁中 NCA, 胆汁中 BGP, ELISA 法
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