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日外会誌. 87(10): 1303-1312, 1986


原著

障害肝切除後のストレス潰瘍予防処置としての cimetidine, 16,16-dmPGE2 の肝再生に与える影響についての実験的研究

神戸大学 医学部第1外科(主任:斉藤洋一教授)

松井 祥治 , 裏川 公章 , 斉藤 洋一

(昭和61年1月8日受付)

I.内容要旨
障害肝切除後に好発するストレス潰瘍の予防対策としてのcimetidineおよび16,16-dmPGE2の投与が障害肝再生に如何なる影響を与えるかについて実験的に検討した.cimetidine 40mg/kg投与群および16,16-dmPGE230r/kg投与群は水浸拘束ストレス6時間負荷後の潰瘍発生を対照群に比して著明に抑制した.また障害肝単肝切群が肝切除後3日目に胃内pHと胃壁血流量が前値に比して有意に低下を示したのに対して,肝切+cimetidine群,肝切+16,16-dmPGE2群ではpHと胃壁血流量の低下が抑制され,障害肝切除後のストレス潰瘍発生予防には両薬剤とも有効であつた.
肝切+16,16-dmPGE2投与群では肝切除後24時間の3H-thymidine取り込み率が単肝切群の26.5±7.4×104DPM/mgDNAに対して44.5±8.3×104DPM/mgDNAと有意に高値を示した.しかし肝切+cimetidine群では19.8±8.5×104DPM/mgDNAと単肝切群と有意な差は認められなかつた.肝機能については両薬剤ともに単肝切群と有意な差を認めなかつた.
障害肝切除6時間前にindomethacin 50mg/kgを腹腔内投与した群では,肝切30時間後のmitoticindexが単肝切群に比して著しい低下を示したが,さらに16,16-dmPGE2を投与した群ではある程度のmitotic indexの回復が認められた.
以上より障害肝切除後に16,16-dmPGE2を投与することはストレス潰瘍予防効果のみならず障害肝再生にも有益である可能性が示唆された.

キーワード
障害肝切除, ストレス潰瘍, 肝再生, cimetidine, 16,16-dmPGE2

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