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日外会誌. 87(8): 907-911, 1986
原著
吻合部動脈瘤発生因子に関する研究
I.内容要旨人工血管移植による合併症のひとつである吻合部動脈瘤の成因に関して教室の臨床例に検討を加え,最近の問題点に言及した.
対象は1963年より1984年までに当科に入院し血行再建術をうけた患者のうち5年以上経過を観察し得た症例とした.これらの症例は100例あり,このうち10例(10%)に吻合部動脈瘤が発生し,吻合数にすると267吻合中17吻合(6.4%)に吻合部動脈瘤が発生した.これらの症例を縫合糸,原疾患,人工血管,吻合部位,吻合方法などに分け検討を加えた.
結果:縫合糸に関しては非吸収性合成繊維で発生率が低く,原疾患別では動脈瘤,閉塞性疾患で差は無く,人工血管に関してはdouble velour Dacronで発生率が低かつた.これを関節を越えた吻合に関して人工血管別にみると,症例数が少なく評価は困難であるが,velour typeの人工血管で成績が良好な印象を持つた.吻合方法では端側吻合で成績が不良であつたが,この吻合方法での発生はほとんどが関節を越えた吻合であり,主因は後者にあると考えられた.
これら吻合部動脈瘤の成因を血管外科の流れを通して検討すると,最近の主な成因は医用材料の進歩に伴い,生体血管の問題が重要となつてきていると考えられた.即ち生体血管の病的変化,血栓内膜摘除による生体血管の脆弱性である.また近年開存率向上のため,ある程度器質化を犠牲にした人工血管は新生外膜の強度に問題があり使用選択部位は慎重でなけれぽならないと考えられた.
キーワード
吻合部動脈瘤, 縫合糸, 人工血管, 血栓内膜摘除, 新生外膜
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