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日外会誌. 87(8): 870-877, 1986
原著
大腸切除後の intestinal adaptation におよぼす ileo-jejunal transposition の影響についての実験的研究
I.内容要旨大腸切除後に発生する下痢の外科的治療法としてileo-jejunal transpositionを考案し,結腸全摘術後の消化管ホルモンおよび小腸粘膜におよぼすileo-jejunal transpositionの影響について実験的検討を行なつた.雑種成犬4頭を用いて結腸全摘術を施行,2頭は同時にileo-jejunal transpositionを付加し,transposition群とした.他の2頭は対照として小腸の2ヵ所で切離・吻合を付加し結腸全摘単独群とした.これらに術前および術後18週経過時に食事刺激を行ない,刺激後4時間まで末梢静脈より採血し消化管ホルモン測定を行なつた.また,手術時および術後18週後の屠殺時に小腸壁を採取し各部位における粘膜の高さを測定し,以下の成績を得た.
1)小腸粘膜の高さは術前ではTreitz靱帯部付近で21.3±0.03mm,回腸中部で1.43±0.02mm,回腸末端部で02.88±0.02mmと肛門側に行くに従い低くなつた.術後は結腸全摘単独群では術前と差は認めなかつたが,transposition群ではいずれの部においても2.00mm以上であり全体に著明な粘膜肥厚が認められた.
2)血漿total-GLI値は結腸全摘単独群では術前・後で差は認めないがtransposition群では術前に比し術後は5倍以上の高値を示した.
3)血漿GI値はいずれの時点でも両群とも術前と有意差は認めなかつた.
4)transposition群で高値を示したtotal-GLIのheterogenityについてgel filtrationによる検討ではglicentinに相当する分画であることが確められた.
5)血漿ガストリン値はtransposition群において術前に比し食事刺激後有意の低値を示し,enteroglucagonがガストリン放出を抑制する可能性が示唆された.
以上より,ileo-jejunal transpositionは大腸切除後のintestinal adaptationを促す方法として有効であると考えられた.
キーワード
大腸切除後の下痢, intestinal adaptation, enteroglucagon, ileo-jejunal transposition, 小腸粘膜肥厚
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