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日外会誌. 87(8): 859-869, 1986
原著
血清5'-Nucleotide Phosphodiesterase Isoenzyme-V値よりみた胃癌並びに大腸癌の肝転移診断能に関する臨床的研究
I.内容要旨5’-nucleotide phosphodiesterase isoenzyme-V(S’-NPD-V)は核酸を分解し,5’-nucleotideを遊離する5-NPDのisoenzymeでありポリアクリルアミド電気泳動法にて最も陽極に泳動される.著者は胃癌152例(肝転移22例),大腸癌150例(肝転移55例)および良性肝・胆嚢疾患20例を対象に術前の血清5’-NPD-V値を測定し,5’-NPD-Vの肝転移に対する臨床的有用性を検討した.さらに,同時に測定した血清CEA値と診断能を比較するとともに,β
2-Microglobulin,Ferritin,LDH,A1-P,γ-GPTなどとも併せ検討した.また血管造影,CTscan,超音波の画像診断法との診断能の比較も行つた.健常者67例による血清S’-NPD-Vの正常値は3.0mm以下である.肝機能障害例および高度喫煙者は偽陽性を示すため除外した.血清5’-NPD-V値は胃癌の非肝転移症例で,1.5±2.0(M±SD),肝転移症例では8.6±9.0mm,大腸癌では,各々2.2±3.3,5.8±5.3mmと肝転移症例で有意(p<0.05)に高値を示した.肝転移に対する診断能は胃癌では,sensitivity 0.682,specificity 0.892,predictability 0.518,accuracy 0.862を示した.一方,大腸癌は各々0.600,0.958,0.805,0.800となつた.血清5’-NPD-V値は,H-numberとともに上昇したがH
1症例では胃癌62.5%大腸癌では40.0%に異常値を示したにすぎなかつた.また,5’-NPD-VとCEA(cut off 5.0ng/ml)を併用すると,肝転移症例の80.9%がどちらか一方,あるいは両者に陽性を示した.また,画像診断との比較では,sensitivityで,5’-NPD-Vが血管造影,超音波診断法より優れていた.
以上より,血清5’-NPD-Vは肝転移のマーカーとしての有用性はあるが,臨床応用での限界も明らかにされた.
キーワード
血清5’-nucleotide phosphodiesteraseisoenzyme-V (5’-NPD-V), 腫瘍マーカー, 胃癌, 大腸癌
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