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日外会誌. 87(8): 853-858, 1986
原著
胃癌,大腸癌術後栄養指標の推移
-TPNにて術後栄養管理を行なつた胃全摘例大腸切除例の検討-
I.内容要旨著者らは先に進行癌患者を対象として多変量解析法によりprognostic nutritional index(PNI)=10Alb.+0.005Lymph. C.;Alb.:血清アルブミン値(g/dl),Lymph. C.:末梢リンパ球総数(/mm
3)を考案し術前患者の栄養状態,術前完全静脈栄養法(TPN)の効果ならびに手術の危険性について検討し報告した.本稿では術後患者の栄養改善度を本指標(PNI)を新たにnutritional index(NI)として用いその有用性を検討した.
対象は胃癌22例,大腸癌18例の計40例であり,いずれの症例も術後第1病日より経口開始期までTPNにて管理された.窒素出納値は大腸癌群で術後第4病日に正に転じたのに対し,胃癌群では第7病日に漸く正に転じた.また,術後第5病日の窒素出納値は大腸癌群の値が胃癌群の値を有意に(p<0.001)上回つていた.尿中3-Methylhistidine排泄量は術後第6病日まで胃癌群の値が大腸癌群より高値で推移する傾向を示し第5病日には胃癌群の値が有意に(p<0.001)高かつた.血清 albumin値及び血清 rapid turnover protein値の推移は両群ともに術後第1病日あるいは第3病日に最低値をとり以降上昇したが,いずれの血清タンパク質も大腸癌群の方が高い値で推移し半減期の短かいタンパク質ほど両群間の差は著明であつた.
nutritional index(NI)は大腸癌群では胃癌群に比べ総じて高値で推移し術後第1病日に最低値をとり,以降,第14病日まで徐々に上昇した.これに対して胃癌群では第1病日の値は大腸癌群に比べ有意に(p<0.05)低値を示し,第7病日までの値は漸増したものの第14病日にはむしろ低下傾向を示した.このようにNIは窒素出納値,尿中3-Methylhistidine排泄量,血清 rapid turnover protein値の推移から推察される大腸癌群と胃癌群の差異をほぼ把えており,術後患者の栄養改善度の指標としても有用であることが示唆された.
キーワード
nutritional index (NI), total parenteral nutrition (TPN), 術後栄養管理, 胃癌, 大腸癌
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