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日外会誌. 87(7): 808-812, 1986
症例報告
腸重積症をきたした虫垂粘液嚢腫の2例
ー術前超音波検査とその有用性についてー
I.内容要旨虫垂粘液嚢腫は,1842年RokitanskyがHydrops processus vermiformisとして報告して以来諸家により報告されているが,これにより腸重積症が惹起されることは非常に稀れであり,本邦でも10数例の報告をみるにすぎない.最近我々は本症の2例を経験したので報告する.症例1.54歳の男性で右側腹部痛及び腫瘤を主訴とし昭和58年12月5日山形県立河北病院受診,注腸造影にてカニ爪様陰影を認めさらに腹部超音波検査にて嚢胞性腫瘤性病変を認めた.開腹すると8×5×4cmの虫垂腫瘤を認め一部盲腸内重積をきたし割を加えると黄白色ゲラチン様物質の流出を認めた.虫垂盲腸底部を切除し組織学的には上皮の一部脱落と間質細胞浸潤,線維性肥厚,内腔への分泌亢進像が認められた.術後経過良好で現在に至つている.症例2.51歳の女性で右下腹部痛を主訴とし昭和60年3月11日同病院外科受診,腹部単純X線写真にて回盲部石灰化像を認めさらに腹部超音波検査にて虫垂根部に嚢胞性腫瘤性病変を認め症例1の経験より虫垂粘液嚢腫と診断.開腹すると著明な移動盲腸を認めて回盲結腸重積をきたしていた.用手的に整復すると10cmの回腸と7×3cmの虫垂腫瘤が引き出された.腫瘤は割を加えると黄白色の内容物が流出し組織学的には上皮の脱落と線維化,さらに内腔への分泌亢進を認めた.術後経過は良好で現在に至つている.
虫垂粘液嚢腫は比較的みられる疾患であるが腸重積をきたすことは稀で我々が文献を検索したうちでは自験例を含め14例にすぎない.最近,画像診断の発達により本症に対する超音波検査の有用性がFish,Liらにより報告されているが,我々の経験した2症例についてもいずれも術前超音波検査を施行し,質的診断まで可能である点より本症術前診断に有効な検査であると考えられる.
キーワード
虫垂粘液嚢腫, 腸重積症, 腹部超音波検査
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