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日外会誌. 87(7): 737-742, 1986
原著
肝大量切除時の内因性エンドトキシン血症
ーとくに腸管内抗生物質投与の効果についてー
I.内容要旨腸管の循環障害や劇症肝炎,高度肝硬変で内因性エンドトキシン血症が発来することが知られている.腸粘膜 barrier の破綻と細網内皮系の機能不全が内因性エンドトキシン血症発来に関与する.そこで肝を70%切除し,肝網内系を量的に減少させ肝切除3日目の家兎で上腸間膜動脈を一時的に遮断して内因性エンドトキシン血症の発来と腸管内抗生物質投与の効果を検討して次の結果を得た.
1.肝切除3日目では indocyanine green clearance,lipid clearanceは68%,19.9分と遅延し,腸管内抗生物質投与はこれらクリアランスの遅延を19.8%,9.6分と改善した.
2.抗生剤投与群では肝切除3日目の血中エンドトキシンの上昇を抑え,上腸間膜動脈遮断およびその解除による血中エンドトキシンの上昇も抑制された.
3.thrombelastogramでは肝切除3日目で凝固が遅延したが上腸間膜動脈の遮断,解除によつて遅延した凝固能が活性化された.
4.GOT,GPT,ヘマトクリットの変動に対しては腸管内抗生物質投与は影響を与えなかった.
5.腸管内抗生物質投与は肝大量切除下でも上腸間膜動脈結紮ショックの生存率を高めた.
以上のことから肝大量切除家兎において,腸管内に抗生物質を投与することは腸内細菌叢を減少せしめ,内因性エンドトキシンの血中侵入量を低く抑え,残存肝の色素クリアランスや網内系機能を良好に保持し,上腸間膜動脈の遮断,解除に伴う内因性エンドトキシンの更なる侵入に対しても解毒面から内因性エンドトキシンの血中増加を抑制したと考えられた.生存率にみられる差は,ヘマトクリット,GOT,GPTに差がみられないことから,主として血中エンドトキシン量の差によると考えられた.
キーワード
肝大量切除家兎, 内因性エンドトキシン, 腸管内抗生物質投与, 上腸間膜動脈遮断
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