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日外会誌. 87(6): 680-696, 1986
原著
DNA 合成(3H-thymidine uptake)抑制率よりみた制癌剤感受性試験(第2報)-乳癌110例の検討
I.内容要旨110例の乳癌(原発89例,再発23例)に,DNA合成(
3H-TdR uptake)抑制率より制癌剤感受性を測定し,種々の検討を行なつた.
DNA合成のcpmによる比較では,stage,組織型,Estrogen Receptor(ER)の有無による差は認めず,log
10cpmの比較では,stageの進行と共にDNA合成が上昇する傾向がみられ,AIIb
2>AIIa
2> AIIa
3>AIIa
1>AIaの順にDNA合成が高かつた.
5×10
4/0.2ml/wellの癌細胞を,MMC:1.0μg/ml,ADR:5.0μg/ml,5-FU:125μg/ml,Ara-C:20 μg/ml,CQ:0.5μg/ml,CPDD:2.5μg/ml,VCR:1.0μg/mlの制癌剤を加えて3日間培養し,
3H-TdR uptakeを測定し
DNA合成抑制率(IR)=(1-(drag(+)cpm-back ground cpm)/(drag(-)cpm-back ground cpm))×100(%)
を計算し、平均IR及び有効判定率(Er;IR 80%以上を有効)を検討した.
病期別では,stage IでCQ,stage IIでADR,CQのIRとErが有意に高く,stage III,IVでもCQ,ADR,5-FUが高いIR,Erを示した.再発例でもADRのIRやErが有意に高く,CQがそれに次いだ.組織型別では,AIIa
1でCQ,AIIa
2でCQ,Ara-C,AIIa
3でADR,CQ,5-FUが高いIR,Erを示した.制癌剤の組織依存性をIR,Erと両者から検討すると,MMCにはAIIb
2,ADR,5-FU,Ara-Cおよび CQにはAIIa
1,AIIa
3,AIIb
2の感受性が高かつた.また同じ組織型でも,stageの進行と共に制癌剤感受性が低下する傾向がみられ,特にstage III,IVではAIIa
2,AIIa
3のADR,5-FUおよびCQ感受性の低下が顕著であつた.ERの有無による感受性の差異は認めなかつた.
再発例全例が5-FU誘導体の長期投与を受けており,その予後と5-FU感受性をIR 80%で区切つて検討すると,50%生存期間がIR 80%以上で7.0カ月,80%未満で3.0カ月であり,予後と感受性が相関する傾向がみられ,本感受性試験の有用性が示唆された.
キーワード
制癌剤感受性試験, 乳癌, 3H-thymidine
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