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日外会誌. 87(6): 671-679, 1986


原著

ガストリノーマの局在診断のための工夫
-選択的動脈内セクレチン注入法-

*) 京都大学 医学部第1外科
**) 京都大学 医学部核医学科
***) 京都大学医療短大学部 病理

今村 正之*) , 峯松 壮平*) , 戸部 隆吉*) , 安達 秀樹**) , 高橋 清之***)

(昭和60年10月22日受付)

I.内容要旨
ガストリノーマ患者における経静脈的セクレチン投与後の逆説的血清ガストリン濃度上昇の事実は Isenbergらの報告以来多数の研究者により確認されているが,その詳細な機構は不明である.私達は既にin vitroでガストリノーマがセクレチンに刺激されるとガストリンを放出する事実を報告したが今回in vivoでもガストリノーマがセクレチンの直接作用でガストリンを放出するか否かを調べ,さらにこの反応が臨床的にガストリノーマの局在診断法に有効に利用しうるか否かを検討した.Zollinger- Ellison症候群患者4例に対し,選択的動脈造影用カテーテルを総肝動脈,脾動脈,上腸間膜動脈 などに挿入しセクレチンを急速注入し末梢動脈と肝静脈から連続的に採血し血清インスリン濃度 (IRI),血清ガストリン濃度(IRG)の時間的推移を測定した.セクレチンがガストリノーマの栄養動脈内へ注入された時,肝静脈血IRGは40秒以内に上昇し,末梢動脈血IRGは60秒以内に上昇した.セクレチンがガストリノーマを栄養しない動脈内に注入された場合は末梢動脈血IRGは60秒以内には上昇せず2分以後に上昇した.
胃切除総患者2例と高ガストリン血症を有する萎縮性胃炎患者1例に腹腔動脈内ヘセクレチンを注入したところ肝静脈血IRG,末梢動脈血IRGはともに上昇しなかつた.
従つてセクレチンはin vivoでもガストリノーマを直接刺激してガストリンを血中に放出させることが結論される.また選択的動脈内セクレチン注入法はガストリノーマの局在診断法として有用なことが示された.

キーワード
ガストリノ―マ, Zollinger-Ellison 症候群, 選択的動脈内セクレチン注入法, ガストリノーマの局在診断

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