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日外会誌. 87(6): 642-653, 1986
原著
門脈圧亢進症の治療方針決定における cineportogram の有用性に関する研究
I.内容要旨門脈圧亢進症の治療方針決定におけるcineportogram(cine-angioportogramとcine-PTPを含む)の有用性を検討する為,41例の門脈圧亢進症に対し,従来の撮影法による静止画像門脈造影(cut film angioportogram)25例25回とcine-angioportogram 26例26回,及びcine-percutaneus transhepatic portogram(cine-PTP)28例29回を施行し,次の5つの診断基準について比較検討した.
1) portal hepatic perfusion
2)左胃静脈血行動態
3)左胃静脈系と短胃静脈系の優位性
4)下部食道胃上部領域における静脈瘤の拡がり
5)食道静脈瘤排出路型式
従来の静止画像cut-film angioportogramとcine-angioportogram共に全例portal hepatic perfusion の程度を評価する事ができた.cut-film angioportogramを施行した症例の64%及びcine-angioportogram を施行した症例の78%に左胃静脈血行動態を遠肝性か,或いは向肝性かどうかという観点から評価することができた.左胃静脈の血行動態をcine-PTPにて評価する為には,造影剤one shot注入関心領域拡大撮影やリピオドール油滴注入法を併用する事が必要であると思われた.cut-film angioportogramの72%,cut-film PTPの100%,cine-angioportogramの77%,そしてcine-PTP の84%の症例に左胃静脈系と短胃静脈系の優位性を評価する事ができた.次に,下部食道胃上部領域における静脈瘤の拡がりと食道静脈瘤排出路型式の評価については,二方向撮影と関心領域移動撮影が同時に可能であるcine-portogramにおいてのみ評価する事が可能であつた.以上,cine-portogram は,門脈圧亢進症における門脈血行動態を立体的かつ動的に評価する事が可能であり,食道静脈瘤の外科治療,特に選択的シャント術の術式選択に有用である事が示唆された.
キーワード
食道静脈瘤, 門脈圧亢進症, 門脈血行動態, cine-portogram, 食道静脈瘤排出路
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