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日外会誌. 87(6): 608-625, 1986
原著
超音波診断装置による胃癌の深達度診断
I.内容要旨術前に体表からの超音波走査による胃癌の深達度診断の可能性および限界をあきらかにするため,胃癌患者の摘出標本の水槽内実験より層構造を解明し,体表走査より深達度診断を行ない手術後の組織像と対比した.
対象は,1983年1月より1984年12月までの当科の入院胃癌患者で,基礎実験では手術胃標本の中から51例を用いた.臨床的研究では,61例を術前に体表より走査し,切除可能な45例について検討した.
使用した装置は東芝電子リニヤー走査装置SAL-30AとSAL-50Aである.
胃癌の超音波断層像は粘膜側より高,低,高,低,高の5層構造を呈する.針の刺入,層の剝離,組織像との比較などの研究より,それぞれ粘膜表面,粘膜と粘膜筋板,粘膜下層,筋層,漿膜下層と漿膜に相当すると考えた.さらに摘出標本や体表走査でのIIc例の検討より,第1層は単なる境界エコーと言うよりは粘膜表面の微細な波状の凹みすなわち腺窩上皮が主に関与していると考えた.
基礎実験の深達度診断率は,mで13/15,smで6/9,pmで3/9,ssで0/4,seで11/14,全体で64.7% であつた.術前の体表走査の深達度診断率はmで4/5,smで3/8,pmで3/11,ssで3/5,seで9/16,全 体で49%であつた.胃体中部より遠位の前後壁の病変では,体表より充分時間をかけ走査すれば,かなりよく深達度診断が可能であつた.最終病理組織診断より深達度を深く読むことがあつても,浅めに読むことは少なく,超音波診断により術前に早期癌としたものの92%が早期癌であつた.seとssの鑑別が困難な症例,潰瘍形成や瀰漫浸潤のため判断を誤る症例があり,これらの点も今後の検討課題と思われた.以上,胃癌の体表からの超音波深達度診断は,積極的に行なつてみてよい検査法と思われた.
キーワード
Gastric cancer, depth diagnosis, Ultrasound, The first layer
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