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日外会誌. 87(5): 518-530, 1986
原著
N-methyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine によるラット胃癌発生過程における組織発生と迷走神経切断効果に関する研究
-とくに異型病巣について
I.内容要旨N-methyl-N-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)による胃癌発生過程において,特に粘膜内に発生する種々の異型病巣に注目し,経時的な観察で各病巣の発生数の推移および分布をみ,各病巣の核DNA量分布パターンを分析し,併せて迷走神経切離(迷切)による異型病巣および癌の発生に及ぼす効果を検討することにより,胃癌組織発生について考察した.
90匹のWistar系ラットを4群に分けた.A群:MNNG 83mg/lを飲料水として25週間投与.B 群:迷切後同様にMNNGを投与.C群:迷切単独群.D群:未処置対照群.これら各群について実験17週(MNNG投与終了前8週)と実験29週(投与終了後4週)および実験37週(投与終了後12週) に屠殺後胃全割標本を作製し詳細に病変を観察した.フォイルゲン染色切片の各病巣核DNA量を顕微分光光度計を用いて測定しヒストグラムで表わした.
MNNGの投与によりラット腺胃には異型病巣と癌が発生し,各病変の中には上行性ないし下行性に増殖する病変が見出され,異型病巣は3型(I~III型)に分類出来た.核DNA量分布パターンの分析から,III型病巣は粘膜内癌と考えられ,II型病巣は癌に近い病変も含む病変と考えられた.上行性あるいは下行性の異型病巣は,各々上行型あるいは下行型癌との強い関連性がみられた.一方,胃発 癌過程に及ぼす迷切の効果はまず異型病巣発生の促進という形で表われ,時間の経過とともに癌発生を促進することが想定された.
本実験系における胃癌組織発生として,II型異型病巣からIII型異型病巣への進展およびIII型病巣から浸潤癌への移行が強く示唆され,またI型病巣の一部からII型ないしIII型異型病巣へ進展する可能性も考えられた.
キーワード
MNNG, ラット胃癌, 核 DNA 量分布パターン, 迷走神経切離
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