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日外会誌. 87(5): 499-509, 1986


原著

食道再建用胃管の viability に関する実験的並びに臨床的研究

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

三吉 博

(昭和60年8月23日受付)

I.内容要旨
食道再建術後に発生する縫合不全の大きな要因である再建臓器への酸素供給障害に注目し,標準的な再建臓器である胃管への酸素供給の実態を知る目的で,組織酸素分圧(tissue oxygen tension 以下 Pto2)を指標に以下の検討をおこなつた.
Pto2の測定に用いた酸素電極の感度直線性,残余電流,温度誤差,応答時間について検討し,その信頼性を確かめた後,雑種成犬36頭を用いた実験にて,作製胃管の先端部Pto2の変動,動静脈処理が胃管Pto2に及ぼす影響,吸入酸素濃度(以下Fio2)変化時の胃管Pto2変動につき検討した.その結果作製胃管の先端部Pto2は正常胃Pto2の58%にまで低下し,その主な原因は左胃短胃動脈処理による酸素供給障害であることが明らかとなつた.Fio2変化時の胃管Pto2変動の検討の結果,胃管Pto2を至適条件に保つためには動脈血酸素分圧(以下Pao2)にして50mmHg必要であり,逆にそれ以上Pao2をあげても胃管Pto2の有意の上昇は得られないことが明らかとなつた.
臨床例において胃管Pto、を経時的に測定し,同時に測定したPao2,循環動態諸量,皮下Pto2と比較検討した.その結果胃管Pto2の変動には,全身的因子以外の胃管局所の要因が関与していると考えられた.とくに術後5日間の胃管Pto2は不安定で,縫合不全の発生した症例では,吻合の安全限界と考えられる30mmHg以下の値を示した.以上の検討から縫合不全予防のためには少なくとも術後5日間は呼吸循環管理を厳密に行うべきこと,理想的には同時期の再建臓器への酸素供給量増大の工夫が必要なことが明らかとなつた.

キーワード
組織酸素分圧, 食道再建用胃管, 縫合不全

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