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日外会誌. 87(2): 200-205, 1986


原著

腸壁内神経叢異常-とくに Hypoganglionosis の臨床ならびに組織学的研究

日本大学 医学部第1外科学教室

宗像 敬明 , 岡部 郁夫 , 森田 建

(昭和60年4月15日受付)

I.内容要旨
腸壁内神経叢異常のうち,Hirschsprung病に属するが,組織検査,直腸肛門内圧検査,注腸造影のいずれの検査においても非定型的異常を示すため診断が困難な疾患のひとつとして,hypoganglionosis の存在が注目されている.しかし,現在までにhypoganglionosisの各種検査成績を総合的に検討した報告は殆んどみられない.われわれは臨床および各種検査成績に関する総合的検討を試みた.
(1)組織学的分類:hypoganglionosisは直腸粘膜のAChE染色所見から3群に分類された.即ち,Type A:部分的にMeissner神経叢を認めるが,その数は非常に少なく,新生児期に既に神経線維の増殖を部分的に認める.Type B:小さいM-神経叢を散在性に認め,乳児期以後に至つて神経線維の増殖をきたす.Type C:M-神経叢は小さく,散在性であり,乳児期以後にも神経線維の増殖をきたさない.従つて,Type Aは直腸粘膜生検の十分な検索により,Type Bは直腸粘膜生検を経時的にくり返すことによつて,神経線維増殖の所見より確定診断が得られる.しかし,Type Cの確定診断は直腸全層生検によつてのみなされる.
(2)注腸造影所見:組織学上の各病型ともHirschsprung病に定型的ないし非定型的な所見を呈した.明瞭なnarrow segmentを64%に認めたが,残る全例ではnarrow segmentが不明瞭ないしはequivocalであつた.患部腸管の長さは全体の91%がshort segmentであつた.
(3)直腸肛門内圧検査所見:全経過中55%に非定型的反射を認めた.異常所見としてtime lagの延長,肛門管基礎律動収縮波数の減少,最大肛門管圧下降量の低下が指摘された.
(4)治療は臨床症状と病変の範囲に応じてaganglionosisと同様に処置されるべきである.しかし軽症例にはano-rectal myectomyが考慮されるべきである.

キーワード
Hypoganglionosis, ヒルシュスプルング病, Aganglionosis

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