[
書誌情報]
[
全文PDF] (4172KB)
[会員限定・要二段階認証][
検索結果へ戻る]
日外会誌. 86(12): 1632-1639, 1985
原著
腎の血流動態からみた腹膜灌流法の選択
-腎局所血流に及ぼす腹腔内圧の意義-
I.内容要旨急性腎不全に対する腹膜灌流の腎局所血流および腎機能に及ぼす腹腔内圧(腹圧)の意義を中心に雑種成犬を用い,実験的に検討し以下の結論を得た.研究対象を4群(各群n=10)に分け,I群:対照群,II群:腹圧10mmHgの間歇的腹膜灌流群,III群:腹圧20mmHgの間歇的腹膜灌流群,IV群:連続腹膜灌流群である.
1.腎皮質血流量はIII群で対照の37.5%と有意(p<0.05)に減少し,腎皮質血流量/腎(皮質+髄質)血流量もIII群で有意(p<0.05)に低下し,腎内血流分布の変動がみられた.腎血管抵抗はIII群で31.5mmHg/ml/g/minと対照の137%と有意(p<0.05)に増大したが,いずれもIV群ではほぼ対照値に回復した.尿量はIII群で対照の23.3%と有意(p<0.01)に減少し,腹圧30.0mmHgでほぼ無尿を呈した.
2.III群における平均動脈圧は対照の94.6%,Renal perfusion pressure(RPP)(平均動脈圧ー平均下大静脈圧)は81.5%(p<0.05),心係数は45.7%(p<0.01),全腎血流量は71.2%(p<0.01),酸素消費量は60.2%(p<0.01)と減少し,下大静脈圧は著明に上昇したが,IV群ではいずれも改善した.
3.全腎血流量(y)は心係数(x)とy=0.015x+1.3(γ=0.823),Renal perfusion pressure(x)とはy=0.056x-1.54(γ=0.890)といずれも良好な正の相関を示し,腎の血行動態を反映する指標としてRPPが簡便で良い方法と考えられた.
4.腹圧上昇によつて腎障害をきたす限界は腹圧30.0mmHg,RPP65.0mmHg,心係数60.0ml/kg/min,全腎血流量は2.2ml/g/min,腎皮質血流量78.0ml/100g/min前後と推定された.
5.腎血行動態からみると連続腹膜灌流法が間歇的腹膜灌流法よりも有利と考えられた.
キーワード
腹膜灌流, 腹腔内圧, 腎血流量
このページのトップへ戻る
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。