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日外会誌. 86(12): 1596-1599, 1985


原著

甲状腺分化癌の肺転移に関する臨床的検討
-特に甲状腺全摘とRI大量投与について-

伊藤病院 
*) 東京都済生会中央病院 外科

尾崎 修武 , 伊藤 國彦 , 眞鍋 嘉尚 , 西川 義彦 , 三村 孝*)

(昭和60年2月5日受付)

I.内容要旨
甲状腺分化癌の手術予後は概ね良好であるが,一旦遠隔転移をきたすと不良である.伊藤病院では過去32年間に,甲状腺分化癌の初回手術例のなかで肺転移例を70例経験しているが,その治療成績は必ずしも満足のいくものではない.そこで,これらの症例の治療予後を向上させるためにはどうすべきかについて,特に甲状腺全摘とRI大量投与の成績から検討し,以下のような結果を得た.
1)生存例42例中22例(52.4%)が甲状腺全摘例で,それ以外は亜全摘以下の手術例であつた.また,死亡例28例中,全摘例は5例(17.9%)のみであつた.
2)RI大量投与を行つた42例について,甲状腺切除範囲を全摘群と亜全摘以下の群とに分けその効果をみると,全摘群ではRI治療によつても肺転移巣のX線写真像が不変と判定された症例を加えても18例中17例が生存していたが,亜全摘以下の群では24例中生存は11例のみであつた.
3)RI大量投与を行わなかつた症例では,甲状腺全摘群,亜全摘以下の群,共に,予後は不良であつた.
以上から,甲状腺分化癌の肺転移例に対しては,たとえ二次的であつても甲状腺を全摘したうえでRI(131I)の大量投与を行うことによつて治療予後を向上させうることが示唆された.

キーワード
甲状腺分化癌, 肺転移, 甲状腺全摘, RI治療

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