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日外会誌. 86(12): 1569-1578, 1985


原著

外科領域における血漿 Thromboxane B2の研究

岐阜大学 医学部第1外科(指導:稲田潔教授)

林 力

(昭和60年2月15日受付)

I.内容要旨
各種外科的疾患について手術前後に血漿Thromboxane B2(以下TxB2)を継時的に測定し,血管病変における血漿TxB2の診断的意義を検討するとともに,手術前後のTxB2の変動を明らかにし,血小板の動向について検索した.また,血漿β-thromboglobulin(以下β-TG)との相関性についてもあわせて検討した.
1)血漿TxB2は,健常者群51.4±30.0pg/mlに比し有意の高値を示したのは,TAO 92.2±76.7pg/ml,心疾患105±81.8pg/ml(以上p<0.05),悪性腫瘍疾患132.9±96.6pg/ml(p<0.01)の3群であつた.
2)血漿TxB2は,血行再建術および一般手術において,術前に比し,術中ならびに術直後で有意に高値を示した.
3)人工血管移植術群では,術中445±80.3pg/mlと著明な高値を示した.
4)悪性腫瘍手術群では,術前132.9±96.6pg/ml,第7病日82.5±33.7pg/mlと腫瘍摘出後,血漿TxB2は有意に低下した(p<0.05).
5)体外循環中では,体外循環開始後10分で801.3+159pg/mlと著明に上昇し,以後漸次減少した.
6)術中,術後のTxB2上昇の要因として,手術侵襲,麻酔,血栓症,代用血管移植,人工弁置換,体外循環などの影響があげられる.
7)β-TGとTxB2とは有意の正相関が認められた(Y=0.762X-1.25,r=0.864,p<0.01).
8)血漿β-TGとTxB2が正相関することより,測定方法が複雑で高価なTxB2測定は,測定が簡便なβ-TG測定で臨床上十分代用し得る.

キーワード
末梢動脈血行再建, 体外循環, Thromboxane B2, β-thromboglobulin

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