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日外会誌. 86(10): 1444-1449, 1985
原著
心臓異種移植に於けるCyclosporine及び輸血の効果について
-近交系マウスとラット間に於いて-
I.内容要旨臨床に於ける異種臓器移植に対する今後の将来性と現時点での問題点を知る必要があると考え,近交系マウスとラット間でmicrosurgery下に心臓移植を行い,輸血の効果とH-2 complexの関係や Cyclosporineの効果について,1)マウスへのラットの心臓移植と輸血の効果,2)マウスへのラットの心臓移植とCyclosporineの効果,3)ラットへのマウスの心臓移植とCyclosporineの効果の三つの実験系で検討した.実験1)に於けるblood donorはrecipientのB6AF
1マウスに対してH-2D領域が抗原不適合のB10.BRマウスとH-2K, I, D領域が抗原不適合のC3D2F
1マウスを選び,移植6週前に 0.25mlを1回輸血した.対照群,C3D2F
1輸血群は全て5日目に拒絶されたが,B10.BR輸血群の平均生着日数は7.0±1.7日(p<0.01)で有意差があり,H-2D領域が不適合の輸血には異種抗原抑制作用があることを認めた.実験2)に於けるCyclosporine投与群は,20mg/kg/dayと50mg/kg/day投与の二群で14日間投与法で試みた.20mg/kg/day投与群の平均生着日数は14.4±3.2日(p<0.001)で, 50mg/kg/day投与群では移植心の収縮は触れるが,1週間以内に3/5匹,2週間以内に1/5匹のrecipientが死亡し,1/5匹は27日間生着したが,至適投与量の問題点を残した.実験3)ではCyclosporine の投与量や投与法に関係なく,全て3日目に拒絶された.おそらく種族の組み合せによつては,donor/recipient間の種族特異抗原や自然抗体の活性が高い時,免疫担当細胞を介する作用での制御には限界があると思われた.抗マウス胸腺血清を使用した同様の実験では,40日以上の長期生着が得られるという報告からも,自然抗体を産生する成熟plasma cellsやimmunoblastsの働きを直接に抑制する免疫抑制剤が理想と考える.今後は,この方面の機序の解明や種々の問題点を解決することにより,異種臓器移植の可能性が生じる.同時に,移植外科領域ではdonorの必要時の入取の容易さ等の点から,異種臓器移植による治療が期待できると考える.
キーワード
心臓異種移植, Cyclosporine, 輸血
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