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日外会誌. 86(10): 1426-1433, 1985


原著

重症胆管炎の病態
-急性胆管炎の臨床像と肝組織像の検討-

*) 福井医科大学 第1外科
**) 横浜市立大学 第2外科

嶋田 紘*) , 新本 修一*) , 松葉 明*) , 三輪 晃一*) , 中川原 儀三*) , 小林 衛**) , 土屋 周二**)

(昭和59年12月24日受付)

I.内容要旨
ショックに陥るような重症胆管炎の病態を明らかにする目的で急性胆管炎の臨床像と肝組織像を対比した.肝組織を採取した急性胆管炎を軽症例(I群18例)と重症例に分けた.重症例は更にショック中に採取した生存例(II群6例),ショック中に採取した死亡例(III群3例),ショック後3週以内の剖検時に採取した例(IV群7例)に分けた.I,II,III,IV群の臨床像を比較すると,エンドトキシン血症の頻度は11.1,83.3,66.7,57.1%,グラム陰性菌々血症の頻度は5.6,60,50,80%で両者とも重症例に有意に高かつた.白血球数や血清総ビリルビン値は軽症,重症例の問でも,各群問にも差はみられなかつた.肝不全の合併率は0,0,66.7,71.4%,DICの合併率は0,16.6,100,71.4%で肝不全,DICともにIII,IV群に有意に高かつた.各群で肝組織所見の出現率を比較するとグリソン鞘の好中球浸潤は11.1,33.3,66.6,57.1%,グリソン鞘の胆管内好中球の出現は27.7,33.3,33.3, 57.1%で両所見とも重症例に多くみられる傾向にあつた.類洞内の好中球浸潤は22.2,66.6,100, 100%,肝小葉のmicro abscessは0,33.3,100,100%で両所見とも重症例に多く,III,IV群の死亡例の全例にみられた.肝細胞の脂肪変化は各群で差はなく,門脈血栓は0,16.6,66.6,100%でIII, IV群に多かつた.肝細胞の巣状,帯状壊死は0,50,66.6,42.8%,広汎壊死は0,0,33.3,57.1% で肝細胞壊死は重症例に,広汎壊死はIII,IV群に特徴的な所見であつた.以上の結果から以下の結論を得た.1)胆汁の膿性化は重症例の特徴的所見ではない,2)類洞内の好中球浸潤,肝小葉のmicro abscessは重症例の特徴的所見であつた.これらの所見は菌血症や実験的エンドトキシン血症の所見に類似することから重症例に於ける菌血症,エンドトキシン血症の存在を組織学的にも裏付けたものと考えられた.3)門脈血栓にもとずく肝壊死は重症胆管炎の死因となりうる.

キーワード
エンドトキシン血症, cholangiovenous-reflux, 急性胆管炎の臨床像, 急性胆管炎の肝組織像

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