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日外会誌. 86(8): 953-958, 1985
原著
Islet-cell tumor に合併した膵頭部動静脈瘻の症例
I.内容要旨症例は50歳女性で,吐血と下血を主訴とし入院した.食道鏡の所見より食道静脈瘤破裂と診断され,経胸的食道離断術が行われた.術前の血液生化学検査では肝炎や肝硬変の所見は認められなかったが,術後,腹水と下痢が著明となり,𦜝上部に異常血管性雑音が聴取された.腹部動脈造影の結果,膵頭部に手拳大の動静脈瘻(portosystemic arterio-venous fistula : 以下PAVFと略す)が確認された.この所見から,当初の食道静脈瘤破裂はPAVFによる門脈圧亢進症によるものと診断された.
試験開腹術後,胆汁性腹膜炎により死亡したが,剖検および病理組織学的所見から,膵頭部islet-cell tumorに併発したPAVFと判明した.PAVFによる門脈圧亢進症は数少なく,本邦では2例の肝動脈門脈瘻が報告されているに過ぎない.Islet-cell tumorは血管に富む腫瘍と言われている. しかし,PAVF合併例は稀で,文献上ではこれまでに1例の報告をみるに過ぎない.
キーワード
膵頭部動静脈瘻, 門脈圧亢進症, islet-cell tumor
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