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日外会誌. 86(8): 941-947, 1985


原著

乳癌の集団検診-早期癌発見の試み

1) 東北大学 第2外科
2) 東北大学 第1外科
3) 宮城県成人病センター 外科
4) 東北労災病院 外科
5) 東北公済病院 外科
6) 国立仙台病院 外科
7) 仙台市立病院 外科

阿部 力哉1) , 佐藤 寿雄2) , 吉田 弘一3) , 針生 常郎4) , 高橋 希一5) , 管野 久義6) , 的場 直矢7)

(昭和59年10月30日受付)

I.内容要旨
宮城県では昭和52年から,乳癌の集団検診を実施し,昭和59年3月末までに延べ94,953人の検診を行つた.乳癌は116人(0.12%)に発見された.集検で発見された乳癌を検診センター(宮城県対癌協会内)で発見された乳癌と比較してみると,T0,T1の早期癌の占める割合が高かつた.また,リンパ節転移の頻度も少ない傾向があつた.しかし,集検時に乳房の腫瘤を自覚しているのは116人中70人(60%)であり,腫瘤自覚がなくて検診によつて発見された乳癌は46人(40%)のみであつた.
早期癌発見のために乳頭分泌細胞診を14,314人に行つているが,5人が陽性で,この中の2人は腫瘤を触知しない乳癌を発見した.またハイリスク群を設定して,これらの人には1次スクリーニングに触診のほかにマンモグラフィーを併用し,一般検診より高い発見率(0.35%)が得られた.これはハイリスク群での乳癌の頻度が高いということばかりではなくて,触知しない乳癌がマンモグラフィーによつて発見されたことも大きな因子となつていると考えられた.したがつて早期癌の発見のためにはマンモグラフィーが有用であつた.
乳癌集検の目的や意義からみた早期発見の問題について考察を行ない,各地で行われている集検の目的が必ずしも明確でない点についても言及した.

キーワード
乳癌集団検診, 早期発見

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