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日外会誌. 86(7): 828-836, 1985


原著

絶対非治癒切除大腸癌症例の検討

埼玉県立がんセンター 腹部外科

関根 毅 , 須田 雍夫

(昭和59年8月17日受付)

I.内容要旨
大腸癌では依然として進行癌も多く,癌の局所進展や腹膜播種,血行性,リンパ行性の遠隔転移のために非治癒切除に終始せざるを得ない症例も少なくない.そこで,大腸癌に対する非治癒切除症例のうち,絶対非治癒切除症例について臨床病理学的所見を中心に非治癒因子と術後遠隔成績を検討した.
1.大腸癌手術症例241例において非治癒切除症例は62例,うち絶対非治癒切除症例は54例(結腸癌27例,直腸~肛門管癌27例)で全体の22.4%を占めていた.
2.非治癒因子についてみると,結腸癌ではH因子は74%で最も多く,ついでP因子は37%,S(A)因子は33%の順であつた.直腸~肛門管癌ではS(A)因子は48%で最も多く,ついでH因子は41%,P因子は22%の順であつた.
3.腫瘍の肉眼型では2型および3型が大部分を占め,組織型では直腸~肛門管癌で中分化腺癌が約半数にみられた.壁深達度ではいずれもss(a1)以上の進行癌であり,結腸癌ではsは63%,直腸~肛門管癌ではaiは44%にみられた.しかし,腫瘍の大きさ,環周度,リンパ節転移,脈管侵襲では一定の傾向は認められなかつた.
4.術後遠隔成績についてみると,結腸癌では1生率39%,2生率24%,3生率19%で,H因子による絶対非治癒切除例の生存曲線は結腸癌全体のそれに近似していた.直腸癌では1生率75%,2生率27%,3生率14%であり,N因子による絶対非治癒切除例の生存曲線は直腸癌全体のそれより下方に位置したが,S(A)因子による絶対非治癒切除例の生存曲線は直腸癌全体のそれより上方に位置していた.また絶対非治癒切除症例における平均生存期間は結腸癌では10.8ヵ月,直腸~肛門管癌では17.6ヵ月であつた.

キーワード
大腸癌, 絶対非治癒切除, 非治癒因子, 腫瘍壁深達度

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