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日外会誌. 86(7): 808-818, 1985
原著
食道癌患者における術前呼吸機能と術後胸部X線写真所見よりみた肺合併症とに関する研究
I.内容要旨右開胸開腹により一期的食道切除・再建術をうけた胸部食道癌患者60例を対象として,術前呼吸機能および手術術式と術後肺合併症との関係を胸部X線像をもとに検討した.術前呼吸機能は%VC≧100%かつFEV
1.0%≧80%の症例をA群(10例),%VC≧80%かつFEV1
1.0%≧70%のうちA群を除いた症例をB群(29例),%VC<80%またはFEV
1.0%<70%の症例をC群(21例)とした.胸部X線正面像を30病日まで経日的に撮影し,肺内のものと思われた異常影を斑状影,浸潤影,均等影に分類した.
術後に1回でも胸部異常影が認められた症例は全体の68.3%であつた.しかし術前呼吸機能別には異常影陽性率に差は認められなかつた.
経日的にみると,胸部異常影陽性率は術後5病日に最高55.8%になり,以後漸減した.術後0病日から3病日では異常影陽性率は呼吸機能別に差が認められなかつた.5病日以後ではA,B,C群の異常影陽性率の経日的変動パターンは相互に異なり,陽性率が最も高い経過をとつたものはC群,次いでB群であり,A群では最も低かつた(p<0.05).
胸部異常影陽性例のうち70.7%の症例では術後3病日以前に異常影が初めて出現した.異常影の初発部位は左下肺野,右下肺野,右上肺野の順に多かつた.各部位における異常影の初発日は左下肺野2.0病日,右下肺野4.5病日,右上肺野1.3病日であり,右上肺野では右下肺野より術後早期に異常影が出現した(p<0.05).C群ではA+B群にくらべて上肺野に異常影が初めて出現することが多かつた(p<0.01).
C群では,全肺野を4分し,その2以上を占める広範な異常影がA,B群より多かつた(p<0.02).このような異常影は全肺野にほぼ均等に分布していた.またC群では異常影が10日間以上持続することがA,B群より多かつた(p<0.05).
以上から,術前呼吸機能は異常影が出現するか否かには関係が少なく,むしろ3病日以後において出現した異常影の進展・回復の過程に関与しているものと考えられる.
キーワード
食道癌術後胸部X線像, 術後肺合併症, 食道癌術前呼吸機能
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