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日外会誌. 86(6): 762-769, 1985
原著
小児短腸症候群の遠隔成績
-栄養評価ならびに消化吸収能についての検討-
I.内容要旨残存小腸が90cm以下の小児短腸症候群の患児9例の栄養評価及び消化吸収能について検索を行なつた.術後経過期間は1年5ヵ月から14年7ヵ月である.全例家庭で普通の食事を摂取しており,月2回の経静脈的脂肪投与を行なつている1例を除き中心静脈栄養などの経静脈栄養は行なつていない.検査項目は身長,体重,血清蛋白,血清アミノグラム,脂質,脂溶性ビタミン及びトレースミネラルである.消化吸収試験としてD-キシロース負荷試験,便中脂肪測定,便中総胆汁酸測定及び糖,アミノ酸の小腸誘発電位測定を行なつた.加えて小腸粘膜の二糖類分解酵素活性と光顕及び電顕による形態観察も行なつた.残存小腸が50cm以上の症例では比較的身長,体重の伸びが良好であつたのに比べ,50cm以下の症例では体重が全例正常値を下回つていた.血清蛋白,トリグリセライド,血清アミノグラムは正常値を示していた.しかし,血清コレステロール値は残存小腸50cm以下の症例では低値をとるものが多く,これらの症例では著明な脂肪吸収障害がみられた.また脂肪吸収障害がみられた症例では血清ビタミンDが低値を示しており,骨レ線写真上でも病的変化が認められた.さらに大部分の症例で胆汁酸の吸収障害も認められた.D-キシロース負荷試験は9例中6例が正常値を示していた.しかし,誘発電位よりみた小腸の単位面積あたりの糖,アミノ酸の吸収量は正常値の2倍の高値を示した残存小腸13cmの症例を除いて,いずれも正常又は低値を示していた.さらにこれらの症例では小腸粘膜のhypertrophicな変化は認められなかつた.このように小児短腸症候群の患児は術後数力年を経ても,必ずしもcompensationが充分であるとはいえず,特に残存小腸が50cm以下の症例では糖,脂肪,胆汁酸などの吸収障害が長期間継続しているため,適切な栄養指導が必要である.
キーワード
小児短腸症候群, 栄養評価, 消化吸収能
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