[書誌情報] [全文PDF] (4708KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 86(6): 717-724, 1985


原著

急性膵炎時の呼吸不全に関する実験的研究

東北大学 第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

武田 和憲 , 山内 英生 , 砂村 真琴 , 鈴木 寿彦 , 宮川 菊雄 , 松野 正紀

(昭和59年10月1日受付)

I.内容要旨
雑種成犬を用い,急性膵炎時の呼吸不全の病態について実験的に検討した.
15%Na-taurocholate 1ml/kgの主膵管内注入により急性膵炎を作成し,呼吸生理パラメーターおよび生化学的パラメーターを経時的に12時間まで検討した.膵炎作成後12時間の時点で屠殺剖検を行い,血管外肺水分量の測定,組織学的検討を行つた.実験群を,GoldfarbらのRespiratory Indexにより呼吸不全を合併した群と合併しなかつた群に分け,この両群について比較検討した.
呼吸不全を合併した群では,呼吸不全を合併しなかつた群にくらべ,著明なhypocapneaを伴う高度のhypoxiaを認め,Respiratory Index,A-aDO2の上昇,a/A PO2の著しい低下を認めた.さらに,血管外肺水分量の増加,肺毛細血管障害を示す血清angiotensin converting enzyme値の上昇,血清lipase値の有意の上昇を認めた.また,血清脂質の変動から,lipolysisの亢進が推察された.
以上より,急性膵炎早期の呼吸不全は肺水腫によるものが主体で,この肺水腫形成には,lipolysisの亢進にもとつくfree fatty acidによる肺毛細血管障害が関与していることが示された.

キーワード
急性膵炎, 呼吸不全, Repiratory Index, Angiotensin Converting Enzyme, Free fatty acid

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。