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日外会誌. 86(5): 602-612, 1985
原著
ハムスターの正常膵並びに実験膵癌におけるセルレインの影響に関する研究
I.内容要旨消化管ホルモンであるセルレインが,ハムスター正常膵に対してtrophic effectを示すか否かをSyrian golden hamsterの8週齢雄を用いて検討するとともに,N-nitrosobis(2-hydroxypropyl)amine(BHP)によるハムスターの膵発癌実験におけるセルレインの影響を検討した.その結果以下の成績を得た.
1)セルレインを20μg/kgを1日に2回,10日間皮下注射した膵は,生食注射対照群に比してその重量が約2倍,amylase含有量は約5倍に,DNA含有量は約1.3倍,膵重量/DNA比は約1.4倍に増加した.またacinar cellにおいて,
3H-TdRによるautoradiogramでのlabeling indexは,対照群に比して約20倍にmitotic indexが約29倍の増加を示した.
2)BHP 500mg/kgにセルレイン20μg/kgを週1回併用注射することにより,ハムスターの膵での発癌は,BHP単独では14週目に初めて見られたのに比して10週目に見られ,10週から14週までの発癌率もBHP単独の12.5%に比して73.3%と有意に高率であつた.しかしそれらの組織型には差がなく,acinar cell carcinomaは両群ともに,1例も見られなかつた.
3)セルレイン20μg/kgを日に2回5日間皮下注射した後BHP500mg/kg,あるいは1,000mg/kgを1回皮下注射したハムスターにおいては,BHP単独群に比して,
3H-TdRのautoradiogramでのacinar cellにおけるDNA合成,mitotic indexの促進がみられた.しかしislet cellやductal cellでは殆ど見られなかつた.
以上の成績から,セルレインはハムスター正常膵に対してhyperplasticおよびhypertrophic effectを有するとともに,BHPによる実験膵癌の発癌を促進する作用をもつことが示唆された.
キーワード
実験膵癌, BHP (N-nitrosobis(2-hydroxypropyl)amine), 膵の栄養効果, セルレイン
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