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日外会誌. 86(5): 587-601, 1985


原著

吻合不能型の先天性胆道閉塞症における肝外胆道系の病理組織学的研究
-その成因と病型分類に関する考察-

新潟大学 医学部第1病理(主任:渡辺英伸教授)
新潟大学 医学部付属病院小児外科(主任:岩渕 眞教授)

山際 岩雄

(昭和59年8月27日受付)

I.内容要旨
先天性胆道閉塞症(以下CBA)の閉塞原因を炎症の結果とする者が多い.その成因・病態を解明するために,まず小児の正常肝外胆道系の特徴を明らかにし,これとCBAの肝外胆道系の病理組織学的所見とを対比させながら検討した.
CBA 23例の肝外胆道系を,連続切片ないし連続階段切片として,病理組織学的に検討した.正常構造の検索には他疾患で死亡した6ヵ月未満の剖検例43例を用いた.
正常例では肝外胆道系の全長に管状胞状腺から成る付属腺を認め,肝門部ではこれに加え数本の細い胆管枝を認めた.胆囊は粘膜ひだを有し,杯細胞や粘液腺を認めた.
CBAの肝外胆道系は肝門部に多数の上皮性管腔構造物を認め,その十二指腸側では少数の管腔構造物を含む肉芽組織となり,三管合流部付近ではほとんど腺管を欠く線維症となつていた.総胆管の開存している例ではそこに正常に比べ多数の付属腺を有しており,炎症所見を認めなかつた.肝門部では種々の形,大きさの上皮性管腔構造物を認めたが,これらは胆管,付属腺およびその集合管,細い胆管枝に由来すると考えられた.これらは手術時日齢がますと共にその数が減少する傾向がみられた.更に術後の胆汁流出には胆管に由来すると考えられる上皮性管腔構造物の存在が重要であると推察された.総胆管開存型のCBAの胆囊は炎症所見を欠き,多数の粘液腺を有していたのに対し,総胆管閉塞および欠損型の胆囊の全例に慢性萎縮性胆囊炎の所見を認めた.
これらの結果から,CBAでは正常に形成された肝外胆管が三管合流部付近に初発した非感染性炎症により閉塞され,肝門部に向かつて徐々にその閉塞病変が上行していくと考えられた.総胆管が開存しているか閉塞または欠損しているかの違いは,炎症の初発部位が三管合流部より近位か遠位かの違いにより生ずると考えられた.

キーワード
非感染性炎症, 微小胆管, 肝外胆道系, 胆嚢, 先天性胆道閉塞症


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