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日外会誌. 86(4): 455-463, 1985
原著
ヒト胃癌細胞(NUGC3)に対する monoclonal 抗体の特異性の検索と臨床応用への検討
I.内容要旨免疫学の分野で新しく開発された細胞融合法によるモノクローナル抗体の作製は,腫瘍細胞表面抗原の解析を容易としたのみならず,癌の診断,治療をさらに発展させる多くの可能性を持つている.我々は,胃癌に対するモノクローナル抗体を作製するために,当教室にて樹立した胃癌培養株NUGC3(低分化型腺癌)を免疫原として用い,得られた抗体の特異性を血清学的および免疫組織学的方法により分析した.その結果,5回の細胞融合により特異性の異なる4種のモノクローナル抗体(GC301, 302, 303, 304)を得ることができた.これらの抗体のうち,上皮性腫瘍と反応を示したGC302は,血清学的反応において胃癌(7/7),大腸癌(2/2),肺癌(5/5)などに腸性を示したが,脳腫瘍,悪性黒色腫,リンパ球および赤血球などとは反応を示さなかつた.さらに免疫組織学的検索では,胃の正常粘膜とは反応せず,胃癌,腸上皮化生,小腸粘膜さらに胎児胃腺と反応を示した.また肝組織においては肝細胞とは反応せず胆管と反応した.これらの結果より,GC302に対応する抗原は,1)胎児胃に存在するが成人胃において消失し,癌化の過程で再び表現されるCEAとは異なる新しいタイプの癌胎児抗原であること,2)消化管を胎生学的発生過程で前腸および中腸由来に分ける分化抗原であることの2つの性格を持つことが明らかとなつた.また転移リンパ節においてリンパ球組織と反応せず,癌組織と反応するため,リンパ管造影などの手技を用いることによりリンパ節転移の診断に有用と考えられた.
次にGC301は,血清学的方法において限られた腫瘍細胞と反応を示したのに対し,GC303およびGC304は正常細胞を含む広汎な細胞と反応を示した.免疫組織学的検索においてGC301およびGC304は間質系成分と反応し,腫瘍と間質との関連を示唆する興味ある結果を示した.
キーワード
胃癌, モノクローナル抗体, 血清反応, 免疫組織学, 分化抗原
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