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日外会誌. 86(4): 435-442, 1985
原著
胃癌および大腸癌における CEA の意義
I.内容要旨これまでの1年間に前橋赤十字病院外科に入院した胃癌および大腸癌患者の血清CEAの測定(Sandwich法)と切除標本のCEA染色(PAP法)を行ない,各癌の生物学的特性と血清CEAを上昇させる因子について検討を行ない,以下の結果を得た.
①手術前血清CEAの平均値と陽性率は胃癌で8,1ng/ml(50%),大腸癌で10.1ng/ml(60%)であつた.
②癌末期群における血清CEAの平均値と陽性率は胃癌で13.3ng/ml(81%),大腸癌で49.8ng/ml(100%)で,大腸癌の方がCEA産生力が強いと考えられる.
③胃癌ではCEA産生力が弱いため,血清CEA値より癌の発見や,切除の可能性を判断することは困難である.
④大腸癌ではCEA産生力が強いため,血清CEA値が癌の発見に役立つこともあり,とくに術後の経過観察には有効である.
⑤切除標本のCEA染色で,組織染色度が(+)以上の組織CEA陽性例が胃癌80%,大腸癌100%にみられ,末期癌における血清CEA陽性率にほぼ等しい値を示した.また組織染色度(+++)例は胃癌で35%,大腸癌で70%を占めており,各癌のCEA産生力を反映していると思われる.
⑥癌細胞のCEA染色様式では,胃癌ではIV型が50%,大腸癌ではI型が70%と最も多い.癌組織の辺縁部(先進部)では濃く染まる傾向があり,とくに分化型癌ではIII型がしばしば出現した.
⑦血清CEA7ng/ml以上を示した切除症例の特徴を検討すると,組織型は分化型,リンパ節転移(+),CEA染色による組織染色度(+++),細胞染色様式は胃癌でO型またはI型,大腸癌でI型,癌の進行度は胃癌でstage IV,大腸癌でstage I~Vまでさまざまであつた.
キーワード
胃癌, 大腸癌, CEA, 免疫組織化学
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