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日外会誌. 86(3): 233-239, 1985


その他

僧帽弁置換術における後尖弁下組織温存術式

東京大学 医学部胸部外科

浅野 献一 , 柳生 邦良

I.内容要旨
過去20年間の弁置換術677例の手術成績を通覧すると頻度の高いMVR 316例の病院死亡率は8.9%,AVR 210例は6.7%,AVR+MVR 108例は11.1%であつた.AVRでは最近5年間の110例では1.8%であつたのに反してMVRでは132例,8.3%に止まり,死亡原因としてLOSと左室破裂が最も注目された.他方,OMCを主とする僧帽弁修復手術ではこれにAVRを加えたものでも20年間の死亡率は1.7%(232例中4例)に止まつた.
以上の経験から20年前にLilleheiの提唱した後尖,腱索,乳頭筋を温存するMVRをとり挙げ,MR,MSR,MS計40例に主として機械弁を用いてMVRを行つた(modified MVR).
病院死亡はなく,MVR detachment 及び肝硬変合併の2例,原因不明死1例を遠隔期に失つた.一般に術後経過は良好でカテコラミン使用期間,人工呼吸期間は短かく,術直後血行動態では従来のMVR群(conventional MVR)に比較して低い左房圧で高い心係数,左室仕事係数がえられた.
遠隔期心臓カテーテル検査はconventional MVR群より早い時期に行われたが両者間に有意の差はなかつた.断層心エコー図によつて左室収縮様式を比較するとmodified MVR 群では心尖部,左室中間部のQ-d time即ち収縮開始からその最大までの時間がconventional MVR群に比較して有意に速かであり,これが良好な血行動態がえられた機序と考えられた.

キーワード
僧帽弁置換術, 後尖弁下組織温存術式, 低心拍出症候, 左室破裂

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