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日外会誌. 86(2): 216-224, 1985
原著
Elemental diet の各腸管分節における吸収に関する基礎的研究
I.内容要旨Elemental diet(ED)は,とくに外科領域において高カロリー輸液とともに,栄養管理に大きな成果をあげている.EDは,化学的に明らかな成分で構成され消化を必要とせずに吸収されるといわれているが,吸収に必要な腸管の長さ,あるいは個々の成分の吸収動態など,未だ不明な点が多いので,その吸収に関して実験的検討を行なつた.
方法:体重10~15kgの雑種成犬を用い,空腸,回腸,大腸に,Thiry Vellaの方法にならい消化液の流れから分離した遊離腸管分節を各々作製した.腸管分節の長さは,空腸及び回腸は50cm,大腸は40cmとした.また,障害腸管モデルとして空腸分節に,1,000radの放射線を一回照射して放射線照射腸管分節を作製した.1kcal/mlに溶解したED-ACを各腸管分節に順蠕動性に注入し,排出液を全量採取し,個々のアミノ酸,糖質,脂質,電解質を測定し,各分節における吸収について,検討した.
結果:総アミノ酸の吸収率は,空腸分節で77.2%,回腸分節で80.3%,大腸分節で41.2%,放射線照射空腸分節で63.1%であつた.各分節における個々のアミノ酸の吸収パターンは,空腸と回腸ではほとんど同じ吸収パターンを示したが,大腸では,小腸と異なる吸収パターンを示した.ED-ACには,糖質としてデキストリンが含まれており,その空腸分節における吸収率は52.8%であつた.
電解質の吸収は,腸管部位により特徴ある吸収率を示した.放射線照射腸管で,水分と電解質の吸収に明らかな障害が認められたが,三大栄養素の吸収率には大きな変動は認められなかつた.
キーワード
Elemental diet, 遊離腸管分節, Thiry Vella loop, 放射線照射腸管, アミノ酸吸収
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