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日外会誌. 86(2): 202-208, 1985
原著
所属リンパ節の組織反応と膵癌の進展度,予後との関連について
I.内容要旨膵癌の切除率は低く,切除例の予後も不良である.膵癌に対する生体の免疫学的防御機構の一端を明らかにする目的で,所属リンパ節の組織反応と膵癌の進展度,予後とを対比検討した.
1960年より1983年までに教室で切除された膵頭部癌33例を対象とした.リンパ節の反応の場として旁皮質領域,胚中心,洞組織球系を選んだ.各症例の所属リンパ節のparacortical hyperplasia(PH),germinal center hyperplasia(GH),sinus histiocytosis(SH)のGrade分類を行ない,それらの程度と膵癌の予後との関連性を検討し,次のような結果を得た.
1)リンパ節転移を認めない症例の各組織反応の程度は転移例に比較して強く,SHで有意差を認めた(p<0.05).
2)原発巣の組織型が乳頭状腺癌あるいは高分化型管状腺癌では組織反応のGradeは高く,低分化型のものほど低値を示した.
3)原発巣の脈管侵襲と組織反応の程度とは関連性がみられ,とくにSHのGradeの低いものでは全例ly(+)であつた.
4)膵癌では,所属リンパ節の組織反応が強い症例の予後が良好であり,PH,GH,SHのGradeが共に低値のもの4例の術後平均生存期間は5.5ヵ月であつたが,共に高Gradeの7例では平均43.4ヵ月であつた(p<0.01).
5)膵癌は細胞性免疫と液性免疫の2つの型の反応が共に宿主抵抗性に関与しているが,sinus histiocytosisは予後良好の指標として,また癌の進展を抑制する因子として意義があると考えられた.
キーワード
膵癌, sinus histiocytosis, germinal center hyperplasia, paracortical hyperplasia
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