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日外会誌. 86(1): 111-115, 1985


原著

全内臓逆位症にみられた膵頭部癌の 1 例

済生会川口総合病院 外科
*) 現在 順天堂大学 胸部外科
**) 現在 独協医科大学 第1外科
***) 現在 順天堂大学 第1外科

坂口 治*) , 神尾 博**) , 桜井 秀樹***) , 熊谷 一秀***) , 小林 英一 , 柿田 紀男 , 土館 松三 , 酒井 和雄

(昭和59年2月10日受付)

I.内容要旨
全内臓逆位症と悪性腫瘍の合併はまれであり,われわれは全内臓逆位症に膵頭部癌を合併した症例を経験したので報告する.
症例は77歳男性.黄疸を主訴として来院した.胸腹部単純レ線像にて全内臓逆位症であることが確認された.超音波断層検査にて,膵頭部腫瘤が鮮明に描出され,門脈への浸潤もなく,PTCおよびERCPにて下部胆管の狭窄ならびに主膵管の拡張,蛇行の所見が得られた.以上より,全内臓逆位症に合併した膵頭部癌の診断の元に,膵頭十二指腸切除術を施行した.再建はChild変法にて行つた.術中,右側に胃弓隆部,左側に肝臓が確認された.
切除標本では,主膵管周囲に浸潤を見る2×2cm大の腫瘤であり,病理組織学的に高~中分化型管状腺癌であつた.
術後経過は良好であり,合併症の併発もなく退院した.

キーワード
内臓逆位症, 膵頭部癌, 膵頭十二指腸切除術

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