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日外会誌. 86(1): 44-50, 1985


原著

各種心保存法の実験的研究
-同所性移植を通じての評価-

鹿児島大学 医学部第2外科

森下 靖雄 , 西元寺 秀明 , 梅林 雄介 , 東 哲秋 , 大園 博文 , 下川 新二 , 豊平 均 , 有川 和宏 , 丸古 臣苗 , 平 明

(昭和58年11月28日受付)

I.内容要旨
各種心保存法を実験的に試み,保存心viabilityを同所性移植後の機能判定をとおして総合的に評価し,それらの保存法を比較検討した.
127組の雑種成犬を用い,warm ischemic time(WIT)及び保存時間(PT)を経たgraftをrecipientに同所性に移植し,recipientの固有循環を負荷した2時間の急性期の観察を規準とした.実験を4群に大別した.
A群は屍体胸腔内の心肺標本を希釈血液で冠潅流し,WIT 15分,PT 1時間のA-1(n=33)とWIT 30分,PT 2時間のA-2(n=19)に分けた.B群は屍体胸腔内の心標本の冠潅流群で,希釈血液冠潅流をB-1(n=20),modified Krebs液冠潅流をB-2(n=14),EL-3号液冠潅流をB-3(n=14)とし,いずれも,WIT 30分、 PT 1時間であつた.C群は摘出懸垂心で,C-1(n=5)はperfluorochemicalで,C-2(n=1)はHydroxyethyl starchでそれぞれ冠潅流し,いずれもWIT 30分,PT 2時間であつた.D群はKcardioplegia,K-verapamil cardioplegia,Collins’M-verapamilcardioplegiaでそれぞれ急速な心停止を得た後,同液に単純に浸漬保存した実験群をD-1(n=8),D-2(n=8),D-3(n=5)とした.3者ともWIT 0,PTはD-1,D-2で6時間,D-3で24時間であつた.
A群の移植心が体外循環の補助なしで,移植後の2時間,良好な血行動態でrecipientの固有循環を維持しえたのは(以下体外循環脱却率としてあらわす),A-1 48%,A-2 26%であつた.B群ではB-1,B-2,B-3で体外循環脱却率は,それぞれ80,64,79%であつた.C群で80%(C-1),0%(C-2),D群で63%(D-1),100%(D-2),100%(D-3)であつた.
各群でWIT,PTが同一でないため,正確な比較は不可能である.そのことを勘案した上で,K-verapamil cardioplegiaと単純浸漬法の組み合わせは,われわれが試みた各種心保存中,目下のところ,最も安全確実,かつ容易に長時間の心保存が得られる方法と考える.

キーワード
心保存, 同所性移植, 冠潅流法, 単純浸漬法


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