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日外会誌. 85(12): 1558-1569, 1984
原著
Expanded polytetrafluoroethylene人工血管による門脈再建術-特に治癒過程の検討
I.内容要旨消化器癌手術の際の門脈合併切除の必要性が高まつており,人工血管による門脈置換が望まれるようになった. しかし感染などの危険のある部位への人工材料の移植は禁忌とされてきた.そこで組織適合性に優れ,開存率の良好な静脈用Expanded polytetrafluoroethylene(以下E-PTFEと略す)人工血管を門脈再建に応用するため,まず門脈移植時の治癒過程を検討し,次に消化器手術のモデルを作製して,その影響を比較検討した.静脈用E-PTFEはfibril length 4〜8μ と短く組織の侵入が不可能なものであった.犬40頭に対し静脈用人工血管を門脈に移植した.さらに胆道,消化管手術のモデルとして総胆管空腸吻合術,胆汁撒布などの付加処置を人工血管移植後に行った.これ等を4群について最長4年8カ月におよぶ長期観察をおこなった.その結果,次の結論を得た.開存率は各群で大差なく,全体で82%と良好であった.新生内膜の形成過程では,血管内皮は当初吻合部を越え,内皮下層と共に人工血管側に侵入してくる.ここまでは血管内皮は中央部に向い一様な膜状の進展を示すが,やがて偽足様の突起を形成し,より中央部の器質化の始まつた血栓膜上に付着し細胞集塊をつくる.そこから更に新たな偽足様突起を形成する. この様な過程が繰り返されながら内皮化は島嶼状に起こり,やがては間隙も埋め尽くされ内皮化が完成するのが観察された.従って内皮細胞の由来は宿主門脈内皮である.また内皮化には,その下層となる血栓膜の器質化が不可欠である.器質化した新生内膜の厚さ0.20mmを越える部分ではその内に栄養血管が存在した. fibril length 4〜8μ の静脈様E-PTFE人工血管は消化器手術のモデルとしての各種刺激に対しても開存性,外側の搬痕組織の厚さ,内膜の厚さ,治癒過程などのうえで対照群に比べ差は無く安定であるため,比較的安全に消化器手術にも併用することができる.
キーワード
門脈再建, E-PTFE 人工血管, 人工血管内皮化
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