[書誌情報] [全文PDF] (2704KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 85(12): 1537-1544, 1984


原著

直腸癌の括約筋温存術後吻合部再発
-とくに腫瘍下縁より肛門側切除断端までの長さ(AW)と関連して-

国立がんセンター 外科

北條 慶一 , 小山 靖夫 , 森谷 冝皓

(昭和59年2月10日受付)

I.内容要旨
過去21年間に,肛門括約筋温存術を直腸癌273症例に施行,現在までに30症例(11%)に吻合部再発を来たし, このうち22症例に再切除を施行した.
これら肛門括約筋温存術施行例の臨床病理所見,追跡所見をコンピューターに入力し,吻合部再発に関係があると予想される22カテゴリー64項目の因子,とくに腫瘍下縁から切除断端までの長さ(AW切除標本) との関連について検討を加えた.
その結果,いわゆるsafety margin (AW)については,著者らが従来から主張し,またほぼコンセンサスを得ていた“進行癌では4cm以上”でなくても, 限局性の進行癌ならやむを得ぬ場合は2〜3cmでも許されるのではないかと判断された.
また,AW 2cm以下というほかに吻合部再発が多くみられるのは, Bor 3型癌,隣接他臓器浸潤癌,全周性発育癌,未分化または粘液癌であり, このような症例は例外として, safety marginはより長く,あるいは直腸切断拡大郭清術を積極的に採用すべきと判断した.
また,吻合部再発例の個々について, その原因を追及したが, 30症例中9症例は有力な原因が推定されがたく,術中(術前) の癌細胞のimplantationによるものではないかと思われる.

キーワード
直腸癌, 肛門括約筋温存手術, 吻合部再発, safety margin

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。