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日外会誌. 85(12): 1528-1536, 1984


原著

胃癌患者における各種非特異的免疫パラメータ術前値と手術根治性および遠隔成績との関係

岐阜大学 医学部第2外科(主任:坂田一記教授)
*) 岐阜市民病院 外科

竹腰 知治 , 佐治 董豊 , 木田 恒 , 梅本 敬夫 , 宮 喜一 , 大下 裕夫 , 横山 幸夫 , 山本 悟 , 種村 広己 , 国枝 篤郎 , 坂田 一記 , 操 厚*) , 伊藤 隆夫*) , 田中 千凱*)

(昭和59年2月14日受付)

I.内容要旨
胃癌術前90例を対象として各種非特異的免疫パラメーターを検索したが,その内IgG Fc receptor positive T(Fc R(+)T)細胞比, PHAリンパ球幼若化反応cpm値および血清中α2グロブリン分画比の3つを中心に健康対象者と各stage別変動を比較し,各パラメーター間の相関関係を求めた上で,手術根治度および遠隔成績につき検討した.
Fc R(+)T細胞比は胃癌全症例で有意に増加し, stage別でもII, III, IVと進行するのに伴つて潮増した. PHAリンパ球幼若化反応は胃癌全症例およびstageII, IVで有意に低下した.血清中α2グロブリン分画比はstage進行に伴い上昇傾向が見られた.また, Fc R(+)T細胞比とPHA幼若化能との間に有意の負相関関係がみられ,手術切除度および遠隔成績との関係で非治癒切除と非切除群はFc R(+)T細胞比の低い領域B1と高い領域B2に分れ,治癒切除群はB1とB2の間に位置し,健康人対照者N領域はほぼB1とA1(治癒切除例をプロットした領域)の共有領域に属した.そして術後1年以内癌死例はB1よりA1との共有領域を除いた領域とB2領域とに集積する傾向がみられた.
一方Fc R(+) T細胞比と血清中α2グロブリン分画比との間には有意の相関関係はみられなかつたが相関分布図の上で手術切除度および遠隔成績との間に,非治癒切除と非切除群はFc R(+)T細胞比の低い領域D1と高い領域D2に分れ,治療切除群はD1とD2の間に位置し,健康対照者N1領域はほぼD1とC1(治癒切除例をプロットした領域)の共有領城に属した.そしてD1よりC1との共有領域を除いた領域とD2領域は全例2年以内に癌死した.
α2グロブリン分画比とPHA幼若化能との間にも有意の負の相関関係がみられた.
以上の結果,胃癌症例術前値の各種非特異的免疫パラメーターが互いに免疫学的調和を保っている例では,術後早期遠隔成績が良好となる可能性が示唆された.

キーワード
胃癌, 手術根治性, 非特異的免疫パラメーター, IgG Fc R(+) T細胞

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