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日外会誌. 85(11): 1405-1417, 1984
原著
乳癌の内分泌療法に関する実験的・臨床的研究
-核内エストロゲンレセプターの変動を中心に-
I.内容要旨BALB/cヌードマウス可移植性ヒト乳癌株(Br-10,MCF-7)を用いて実験的内分泌療法をおこない,両腫瘍のホルモン依存性とホルモンレセプターとの関連について検討を加えた.対照群のBr-10は細胞質内エストロゲンレセプター(ERc)陽性,核内エストロゲンレセプター(ERn)陰性,プロゲステロンレセプター(PgR)陰性であり,MCF-7はERc,ERn,PgRともに陽性であった.Br-10の増殖はestradioldi propionate (E)と17α-hydroxy progesterone caproate(P)の併用により促進され,ERn,PgRは陽性化した.E単独では増殖促進を伴わないER系の作動が観察されたが,P単独ではこのような効果はみられず,tamoxifen(TAM)投与では一過性のERn,PgRの陽性化ののちにレセプター系の抑制がみられ,腫瘍の増殖は抑制された.MCF-7は無処置雌マウスで増殖せず,Br-10より高度のホルモン依存性が認められた.また両腫瘍のホルモンレセプター系は,宿主のホルモン環境においてEが十分になると作動し,不足するとERcの部分で停止することが示唆された.
臨床上ERc陽性ERn陰性PgR陰性で内分泌療法に反応する乳癌症例は,十分なホルモン環境下ではホルモンレセプター系の作動をし得る可能性が考えられ,臨床材料を用いてin vitro estrogen primingによるERの核内translocationの実験をおこなった.
ERnの陽性率は,ERc陽性乳癌75例中21例(28%)と極めて低かつたが,in vitroでestrogenと接触させることにより17例中10例はERcのtranslocationによるERnの陽性化がみられ,ER系の賦活化がみられた.このin vitroのER核内translocationは,ERc,PgRの測定に加えて乳癌のホルモン依存性解明に有用な因子であると考えられた.
キーワード
乳癌, 核内エストロゲンレセプター, ホルモン依存性
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